本研究は、Webサイト設計手法の一つであるペルソナ手法を応用して、看取りケアの質評価を可能にするプロトコル作成を含んだ介護保険施設における看取りケア教育の手法の開発が目的であった。平成25年度から開始し、一年の延長期間を受けて平成28年度に映像教材を制作した。さらに、この教材を広く介護保険施設で働く職員が利用できるようにWeb配信システムを構築した。ただし、利用者への教育の質を適正に保つ目的および教材の質評価を行う目的から映像の利用は、教育資材の使い方や使ったことの効果などを測定する仕組みの中で配信することになっている。 計画では、ペルソナ作成から教材開発を行い、介護保険施設での現任教育の実践と改善の繰り返しからいくつかの典型的な看取りケアの事例を場面ごとに制作・配信する予定であった。しかし、看取りケアの質を豊かにする目的からリアリティのあるペルソナ作成は欠かせないと判断したこと、映像制作に掛かる事前の費用試算がそれに見合ったもので無かったことが影響し、いくつかの映像制作会社と交渉が成立せずに研究期間は延長し、資金確保の点からも予算の繰り越しを要した。研究代表者の研究機関変更に伴う資金の利用期間制限も一部、進行の遅れに影響した。結果として、本研究期間を通して制作・配信が完了したのは1事例の映像教材となった。事例数は、少なくなったが本事例は、一人の高齢者が施設に入所し生活する日々から、生命危機を迎えた場面、回復した場面、最期には臨終を迎える場面、臨終を迎えた後に家族と職員が関わる場面など、本人への看取りケアから家族のグリーフケアまで幅広い場面を取り入れ、各場面の学習ができるように工夫されている。また、多職種連携が上手くいくことにより看取りケアの質が確保されるため、多職種が同時にも個別にも学習できるように問いかけの工夫がある点で、今後の看取りケア教育への貢献と発展が期待できる。
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