研究課題/領域番号 |
25463573
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
渡邉 久美 香川大学, 医学部, 教授 (60284121)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 家族支援 / 認知症ケア / 家族アセスメント / 訪問看護 / 在宅ケア |
研究実績の概要 |
在宅認知症高齢者の家族介護者との協働関係を基盤とする訪問看護師による家族支援モデル構築に向け、本年度は主介護者とのコミュニケーションツールとしてのICTシステム展開における構成要素を検討した。 認知症高齢者の家族介護者、9名のインタビューの逐語録を基に、家族アセスメントの視点を抽出し、以下の3領域に集約した。分析は共同研究者と合意が得られるまで検討を行った。 【1】当事者と家族介護者の相互作用として、1)自己の生活リズム:安定―調整中ー不良、2)当事者とのこれまでと現在の関係性:愛着ー葛藤ー疎遠、2)コミュニケーションの質:充足ー試行錯誤段階ー対立、3)心理的距離:安定―密着ー動揺、【2】家族員のパワーバランスとして、1)ケア主導権:掌握―試行錯誤段階ー服従、2)介護・家事等の手段的支援:充足-模索段階ー未充足、3)ねぎらい等の情緒的支援:充足-未充足、【3】周囲の支援として、1)ケア情報:入手―探索・選択段階―活用、2)ピア支援:充足―探索段階ー未充足、3)近隣・仲間とのつきあい:オープンークローズ、充足ー未充足)が抽出された。 また、援助関係の形成過程において、これらの家族介護者を中心とする3層の重要他者との関係性について、対話を通じて共有していくため、ICTシステムを活用し、可視化していくための図案を検討した。家族介護者の置かれている状況の理解や、支援のニーズの明確化につながるよう、今後、家族介護者のメンタルヘルスのアセスメント項目とともに、システム上に実装する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
訪問看護師による家族とのパートナーシップ形成をめざした関わりを模索する際、認知症の様々な病型や病期、精神症状などの当事者の医学的な問題や、嫁姑や実母などの続柄やそれまでの家族の関係性、また、介護者側の身体状態やストレス耐性、経済的側面など様々な背景が絡んでくる。これらを踏まえた上で、認知症の家族介護者と協同的な関係形成を志向する標準的なモデルとするために、引き続き、データ収集を継続し、内容を洗練させていく必要がある。また、今後、現場でICTを活用して、本モデルに基づくアセスメントを実施することで、訪問看護師が効率的に、家族とのコミュニケーションの中で用いやすいマニュアルを作成しており、これらの検討に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
認知症高齢者の家族介護者への訪問看護師による家族とのパートナーシップ形成モデルのアセスメント部分について、複数名の訪問看護師へのヒヤリングを繰り返し、マニュアルを完成させる。また、これらを多忙な訪問看護師が、現場での活用可能性を高めるための多くの課題があるが、コンセンサスを得られるものとするため、用語の用い方に改良を重ね、少ない質問項目でアセスメントができるように、ケースに応じて活用する部分を変化させるなどの方法についてもヒヤリングを行っていく。必要に応じて、認知症高齢者の状態像と家族介護者の状況の可視化を行うことで、家族と訪問看護師が現状の確認を行い、ニーズの把握や課題を共有していくことのできるモデルのプロトタイプを完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までに在宅ケアにおける訪問看護師向けの「認知症高齢者の家族介護者とのパートナーシップ形成モデル」を検討してきたが、そのフレームワークを構築するために、文献検討、認知症家族介護者から収集したデータより分析を重ね、共同研究者との検討を行い、最終案の構築までに時間を要した。これは、将来的に、ICTシステムとしての活用も視野に入れていることも一因である。アセスメントの項目とその結果を、視覚的に訴えることのできる内容となるように構造化しており、可視化することで、家族と共有することが可能となる。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、今回構築したフレームワークを土台にして、パートナーシップ形成モデルにおける、認知症高齢者の家族介護者おけるアセスメントマニュアルを完成させる。 素案は、研究者が作成し、訪問看護師へのヒヤリング、システム専門家との打ち合わせ、デザイン、プログラム作成経費などに用いる。これらの打ち合わせにともなう会議費、必要経費、旅費、外注費などを予定している。
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