研究課題/領域番号 |
25463616
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西垣 昌和 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20466741)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 一次予防 / 生活習慣病 / 遺伝 / 国際情報交換 |
研究概要 |
平成25年度は,研究代表者がこれまでに開発してきた,糖尿病家族歴を有する健康成人を対象としたリスク教育/動機づけ支援としての遺伝カウンセリングの活用に関する知見の他疾患への応用を図るべく,国内外の既存の知見及び現在進行している関連研究について検討した.特に,本分野において,遺伝子多型解析を含めた挑戦的取り組みがなされている米国における知見の整理に重点を置き,米国の当該領域研究者のエキスパートオピニオンを収集した. 米国においては,糖尿病領域においては遺伝子多形解析の結果が対象者の行動変容を促進するかについてのランダム化比較試験が複数進行中であった.ただし,いずれのランダム化比較試験も,遺伝子多型解析結果に基づくリスク計算や発症予測そのものの精確性は未だ不確かであるという前提のもとに,対象者を動機づけるツールの一つとして遺伝子多形解析を位置付けていた.遺伝的要素に着目した生活習慣予防戦略において,遺伝子多型解析をその主要ツールとして位置付ける事は妥当ではないことを示していると考えられる.このことは,遺伝素因の指標として遺伝子型でなく家族歴を選択している本研究の基本的スタンスと一致するものであった.ただし,家族歴という(検査結果ではないという意味で)目に見えないリスク因子よりも,自らの体の検査結果として目に見える遺伝子型の方が対象者に与えるインパクトの現実性が高いことが推察され,今後は遺伝子多型解析を取り入れることも,予防戦略デザインの一つとして検討する価値はあると考えられた. 前述のように,遺伝素因に基づく予防研究は,糖尿病領域で先行している.米国においては,次なる対象領域として心血管疾患(主に虚血性心疾患)にフォーカスが定められており,我が国においても心血管疾患における遺伝素因に基づいた予防戦略立案の対象として検討する必要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本領域のエキスパートとの国際情報交換により,家族歴に基づいた予防戦略の設計と糖尿病領域に続く対象領域の設定において有意義な情報が得られた.また,遺伝素因および予防について検討する際には必須ともいえる人種差,生活習慣の違い,健康行動における文化差について,その差異を検討するための国際比較研究の方向性も示された.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,対象領域を心血管疾患に定め,家族歴を有する健康人の,遺伝,生活習慣病とその予防に関する特性を調査し,それに基づいて遺伝カウンセリングツールの具体的内容を検討する.その際には,諸外国におけて実施されている予防的介入とそれに対する対象者の反応における人種差,生活習慣の違い,文化差を加味し,将来的に多文化に対応できるツールの作成を目指す.その後,実際の介入者となる保健師,遺伝カウンセラーへの多因子遺伝疾患に対する介入の教育を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,海外研究者との情報交換および共同研究準備のために8月より半年間米国に出向しており,その間は科研費の執行がされなかったため. 平成26年度以降は,物品費,謝金を伴う研究計画の遂行,および米国共同研究機関との連携のための費用(出張費等)として,次年度使用額が執行する予定である.
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