研究課題/領域番号 |
25463628
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中谷 久恵 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (90280130)
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研究分担者 |
金藤 亜希子 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (80432722)
松本 裕子 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (20633639)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保健師 / 家族支援 / ICT / eラーニング / 援助技術 / 教材 |
研究概要 |
本研究は、保健師が家族への援助力をICT教育から学び、家族への支援能力を向上させることを目指している。平成25年度はeラーニングの教材制作のための予備調査と、システム設備を仮設定した。平成26年度に行う予定であった一般住民を対象としたSimulated Family への学習会を終え、動画教材の撮影のプレテストを実施した。 教材制作では、保健師へのニーズ調査によりテーマを絞る予定であったが、まず既存文献から保健師が遭遇する援助事例の特徴と援助技術を明らかにする予備調査を行った。文献は医学中央雑誌より「保健師」と「家族」「家庭訪問」のクロス検索で原著論文の抄録付を過去30年に遡って検索し、1995年以降の578文献を選択した。578文献の抄録から、調査対象者が保健師であること、保健師が家族へ実践した援助もしくは技術が具体的に記述されていることを選定基準としてさらに精選し、22件を分析文献とした。保健師が遭遇した事例の特徴は、発達障害 児童虐待、新生児、精神障害、高齢者の閉じこもり等であった。文献から得られた援助技術には家族との関係形成、家族力量の強化、専門職の連携、地域と家族をつなげる支援など、家族を通して専門職の教育や住民の自助や共助の向上を意図した項目が抽出され、家族の課題から地域づくりまでを目指す援助技術が含まれていた。 予備調査で得た援助技術をICT教育での教材制作に活かすため、1つの意味内容ごとに技術項目をコード化し援助技術の構造化を行った。技術項目の妥当性を高めるため熟練保健師2名、経験年数5年以上で修士号をもつ保健師4名と個別に面接し、援助技術の内容や表現について意見交換を行い、最終的に18項目にまとめた。この構造化された援助技術は、平成26年度に行う保健師対象の調査で一般化を行い、教材のシナリオ作成や評価尺度に用いるアイテムプールとして活用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
保健師がeラーニングで家族への援助力を学ぶ教材制作の第1段階として、当初はすぐに保健師へのICT教育ニーズ調査を行って家族支援での困難感の抽出と家族介入場面を学ぶ教材分析の基礎データを得る予定であった。しかし、調査用紙の作成段階で自由記述の抽出による曖昧さや不確実性が危惧された。文献から調査用の情報を検索した段階で、既存研究を活かすことでより確実なニーズ調査ができることを認識し、先に文献での質的研究で予備調査を実施した。その結果、家族支援への困難感や事例の特徴、援助技術の構造化が文献研究によって得られた。保健師へのアンケート調査を平成25年度に実施できなかった遅れはあるが、量的調査に向けた基盤を予備調査によって固めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に行う予定であった保健師へのICT教育ニーズ調査および家族支援での困難感の抽出と家族介入場面を学ぶ教材分析を前期の9月末までに実施する。その結果をもとに、eラーニング用コンテンツの制作を10月以降の後期に行う。平成26年度に行う予定の模擬家族であるSimulated Family への学習会は、すでに平成25年度に一般市民の協力者を集めて終えており、撮影に向けたプレテストは実施済みである。そのため、教材のシナリオ作成後には年度内に動画制作を行う。平成25年度の予備調査を11月の日本公衆衛生学会の発表後にまとめ、平成26年度の保健師へのニーズ調査を次年度の日本地域看護学会で発表する。予備調査を行ったことで研究成果の公表が遅れているため、できるだけ進めていく。平成27年度以降の予定については計画を変更せずほぼ予定通りに進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度のeラーニング教材の制作に向けた準備として、平成25年度には保健師400人~500人を対象とした量的調査から、ICT教育へのニーズと家族支援での困難感の抽出と家族介入場面を学ぶ教材分析の基礎データを得ることを予定していた。しかし、文献から調査用の情報を検索した段階で、既存研究を活かすことでより確実なニーズ調査ができることを認識し、先に文献での質的研究による予備調査を実施した。そのため、郵送法による量的調査に用いる物品購入やデータ入力、解析等の調査費の支出が平成26年度へ繰り越されることになった。 次年度に繰り越した費用の大半は、平成25年度に予定していた保健師約500人を対象とした郵送法によるアンケート調査と、そのデータ入力、整理、解析等の費用に使用する予定である。
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