研究実績の概要 |
最終年度は、これまで質的機能的方法で抽出した管理的能力獲得に寄与する経験に関して、それを数量的に実証し、モデル構築を行うことを目的として研究を実施した。 具体的には、全市町村(1,742)の保健師の職業背景を持つ者のうち、最も職位の高いもの2名に対して、自記式郵送質問紙調査を実施した。調査内容は、職位、属性、経験18項目、保健師実践能力尺度(佐伯ら)、地方自治体職員の職務遂行能力尺度(課長級)(榊原)である。回収された調査票のうち、課長職以上の保健師を抽出し、経験についての項目分析と因子分析を行い、得られた因子のα係数の算出を行った。その上で、得られた経験の因子を潜在変数、保健師実践能力得点および職務遂行能力尺度得点を観測変数として、共分散構造分析を実施した。 1,379通の回答のうち、課長以上の職位にあり、経験、実践能力、行政能力の設問のすべてに回答した。364名を分析対象とした。経験の項目分析により天井効果のみられた1項目を削除し、オブリミン法の回転を伴う因子分析を実施した。その結果、第1因子「活動を通じた保健師としての質の高い実践」α=0.842、第2因子「保健以外の部署への配属」α=0.511、第3因子「所属内・外とのネットワークと刺激の獲得」α=0.769が抽出・命名された。共分散構造分析を実施した結果、第1因子を外生変数とし、3因子から保健師実践能力を経由し課長級の職務遂行能力に至るパス、および第1因子から直接、課長級の職務遂行能力にいたるパスを有するモデルが得られた。モデルの適合度は、GFI=0.907、AGFI=0.880、CFI=0.908 、RMSEA=0.065であった。 以上の結果から、一定の妥当性を有する保健師の管理職の能力獲得モデルが得られた。
|