研究課題/領域番号 |
25463635
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
波多野 浩道 鹿児島大学, 医学部, 教授 (50164851)
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研究分担者 |
兒玉 慎平 鹿児島大学, 医学部, 講師 (80363612)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ソーシャル・キャピタル / 島嶼 / 社会的凝集性 / 近隣資源 / ソーシャル・サポート / 情報チャンネル |
研究実績の概要 |
本年は昨年度の予備調査をもとにインタビューガイドを作成した。グループ・インビューのグループとしては、住民活動への参加が高い集団、介護者、町内会、婦人会、保健医療従事者を選定した。サンプリングはグループについては組織を単位とし、それ以外は機縁法によるものとした。社会経済的状況の差異が近隣のソーシャル・キャピタルに影響することから、社会経済的状況の異なる島嶼として、沖永良部島、加計呂麻島、種子島、甑島を選定した。甑島は情報収集のみで、実査はできなかった。リサーチ・クエスッチョンは『近隣のソーシャル・キャピタルである、社会的凝集性と近隣資源がどのように健康事象に影響しているか』である。特に後者の近隣資源について、『健康に正にあるいは負に影響を及ぼす近隣の実体的・潜在的資源は何か』、『近隣資源に対して、ネットワークのメンバーがどのようにアクセスするのか』がその内容である。影響を検討する健康事象は、QOLや全体的な健康および食事、運動、喫煙、過度の飲酒を含む健康行動とした。健康事象に影響する近隣資源としては、ソーシャル・サポート、情報チャンネル、地域を維持しようとする統制力、近隣組織への参加がその構成要素と考えられた。住民活動への参加が高い集団では、主としてソーシャル・キャピタルの健康に有益な面が捉えられた。喫煙や過度の飲酒については、近隣組織への参加度が高いことが不利益と関連していることが示唆された。ただし、このことは対象とした地域がすべて社会的凝集性が高い地域のためかもしれしれない。一方、婦人会への参加は自分たちの時間やリソースを多大に地域社会に提供しなければならないことが存続を難しくしているが、当該婦人のみならず、地域のエンパワメントを醸成していたという点で健康問題にとっても重要であった。さらに、情報チャンネルとしての同級生、同業者の役割が重要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度のみで考えると順調であるが、昨年度の遅れを取り戻すまでには至らなかった。予定していたグループインタビューで実施できなかった集団や実査できなかった甑島等もあったが、質的研究の成果により『近隣のソーシャル・キャピタルと健康の関連』を捉える枠組みは出来た。インタビューの個々の結果は解析したが、それらを統合することは出来ておらず、量的調査を企画する前に、モデル構築をする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定した目的を達成するため、本年度は質的研究の成果を統合し、『近隣のソーシャル・キャピタルと健康の関連』を捉えるモデル構築を行う。その過程で、まずエスノグラフィーによるケースを積み重ね、帰納的にモデル構築を行いたい。その上で、島嶼での健康づくりの戦略に活用できるように、モデルの検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙調査を想定し、パソコンとデータ回収作業や情報処理のために、ipadの購入を予定していたが、質問紙調査までは実施できなかったので、その分の費用を翌年度に持ち越した。質的研究のためのレビュー等を受ける謝金や消耗品費に使用も研究進捗に併せ、見送った。次年度に向けた調査打ち合わせ等の旅費も調査地が次年度を希望したので、持ち越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
モデル構築のための質的研究の成果を統合する。可能な限り、対象島嶼での調査可能な時期に合わせて、共同研究者および研究協力者も一緒に、集中的に調査を実施する。投稿あるいは投稿準備として学会報告を行う。
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