研究課題/領域番号 |
25463641
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
柄澤 邦江 長野県看護大学, 看護学部, 講師 (80531748)
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研究分担者 |
大石 ふみ子 愛知医科大学, 看護学部, 教授 (10276876)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 緩和ケア / がん診療連携拠点病院 / 緩和ケアチーム / 訪問看護師 / 地域緩和ケア体制 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、がん診療連携拠点病院であるA病院の緩和ケア外来に通院するがん患者の緩和ケアに関するニーズを明らかにして、今後の地域緩和ケアについて検討するために無記名自記式質問紙調査を実施した。平成27年2月~4月の3か月間に緩和ケア外来を受診したがん患者30名を調査の対象者とした。A病院および研究者の所属する大学の倫理審査において承認を得た後実施した。調査内容は、通院している上での不安や地域の緩和ケアに関する認識などを尋ねた。調査への協力は自由意志であることなどを説明文書に含め倫理的配慮を行った。 調査の結果、患者16名から回答があった(回収率53.3%)。回答者は平均66.8歳、男性81.3%、A病院以外のかかりつけ医が有る者は31.3%であった。緩和ケア外来への通院のきっかけでは、医師の勧めが81.3%、看護師12.5%であった。87.5%が病気に伴う心の悩みがあり、緊急的な連絡を43.8%が経験していた。居住している地域において、「患者や家族が望む場所で療養ができている」と『そう思う』31.3%、「自宅においても医療や看護ができている」と『そう思う』12.5%、「主治医二人体制の充実が必要」と『そう思う』『よく思う』が62.6%、「自宅での医療や介護を充実する必要」と『そう思う』『よく思う』が68.8%であった。自由記述では、〔緩和ケアの存在を多くの人に知らせる必要〕、〔看護と医療のスタッフとの信頼関係できる関係が必要〕などの意見があった。 本調査により、緩和ケア外来に通院している患者は病気に伴う心の悩みがあり、自宅での医療や看護の充実や主治医二人体制の充実を望んでいることが明らかになった。今後の地域緩和ケアにおいて、がん診療連携拠点病院とかかりつけ医の連携を強め、患者と家族の悩みに寄り添うような医療と看護の体制を整備する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、シームレスな地域緩和ケアを提供するために、地域で緩和ケアに携わる看護職が今後どのように連携し活動していくことが望ましいかを検討することが必要である。平成26年度の患者調査は、本研究の第2段階として、看護の対象となる患者の認識を明らかにするための調査を行った。当初の計画どおり、がん診療連携拠点病院の緩和ケア外来に通院するがん患者の緩和ケアに関するニーズを明らかにするため、患者を対象とした無記名自記式質問紙調査(調査Ⅲ)を実施した。調査説明を行った後、調査への協力の意思を確認して調査票を渡すため、3か月間の調査期間をもっても30名が限界であった。回収率53.3%であったが、病気に伴う心の悩みがあること、自宅での医療や看護の充実を望んでいることが明らかになり、自由記述でも緩和ケアへの関心を高めることの必要性などが得られたことから、当年度の調査結果も重要な知見が得られたといえる。平成26年度は、平成25年度に実施した調査結果を複数の学会で発表できた。平成27年8月にも国際学会でその一部を発表する予定である。平成26年度の患者調査の結果は、今後の緩和ケアや地域看護に関する学会および論文で発表する予定である。以上のことから、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、これまでの調査(Aがん拠点病院に勤務する看護職への質問紙調査(調査Ⅰ)とAがん診療連携拠点病院と同じ二次医療圏の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師への質問紙調査(調査Ⅱ)、および患者を対象とした無記名自記式質問紙調査(調査Ⅲ))の結果をふまえ、シームレスな地域緩和ケアを提供するための方策を検討する。その方策として、これらの調査結果について、調査対象とした訪問看護師およびA病院の看護職の代表を対象に結果報告会を行う。その際、今後どのように地域において緩和ケアを行うことが必要であるか、看護職同士や他職種との連携、具体的な活動について情報交換や意見交換などのグループミーティングを行う。グループミーティングでは、それぞれの所属する機関の特徴があるものの、共通した課題や工夫もあると考えられるため、今後の改善や工夫を一緒に考えて共有する場とする。以上の取り組みから、今後のシームレスな緩和ケアを提供するための地域緩和ケア体制の構築に向けて考察する。 最終年度でもあることから、研究成果についての報告書を作成し、学会、論文等で成果報告を行う。その際、今後の課題として考察されたことについては、今後の研究に反映できるように課題の本質を明らかにして整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、平成26年度に予定していた調査発送補助や集計業務などについて、雇用したい時期に引き受けてくれる人材がみつからなかったため、謝金を使用しなかったことである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度はグループミーティングの実施を計画していることから、その際の資料作成と逐語録作成などの費用が必要である。また、最終年度として報告書作成を計画していることから、資料整理や研究者会議資料作成、報告書発送などに経費が必要となる見込みがある。成果報告としては、予定している国際学会以外の学会にも参加したいと考えている。したがって、平成26年度の残額は次年度に有効に使用したいと考えている。
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