研究課題/領域番号 |
25463643
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
古田 加代子 愛知県立大学, 看護学部, 准教授 (00319253)
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研究分担者 |
流石 ゆり子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70279892)
輿水 めぐみ 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90405225)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 転居高齢者 / 適応 / 介護二次予防 / 地元高齢者 |
研究概要 |
転居高齢者には、健康状態や自立した生活に不安を抱える介護および介護予防ニーズの高い高齢者が多く含まれる。その上転居が高齢者に与える影響は非常に大きい。本研究では、転居高齢者の転居後の身体・心理・社会的状態などを地元高齢者と比較検討するとともに、転居後の良好な適応の要因を明らかにすることを目的とした。 初年度は転居高齢者の身体・心理・社会的状態および日常生活状況などについて、地元高齢者との比較からその特徴を明らかにすることを計画した。自治体の協力を得て、転居高齢者が多く居住する地区を含む中学校区に居住する75歳以上の高齢者340名に質問紙調査を郵送し、訪問で回収した。 対象者のうち入院、入所、認知症などで回答不能な者80名を除き、260名中180名(69.2%)の回答を得た。有効回答数は174名(96.6%)であった。このうち転居高齢者は29名で平均年齢(±SD)は81.3±5.1歳、地元高齢者は145名で平均年齢(±SD)は80.6±4.4歳であった。 現居住地での適応について両者では有意な差がみられ、転居高齢者には「慣れていない」と回答した者が多かった。日常生活においても転居高齢者は近所への外出、日用品の買い物、排泄、入浴などの項目で家族の介助を受けている者が有意に多く、庭の手入れや友人・近所の人との会話も有意に頻度が低下していた。また基本チェックリストを用い介護二次予防が必要な項目を比較したところ、転居高齢者に口腔機能低下者が有意に多かった。また有意な差はないものの、転居高齢者のうち認知機能の低下は62.1%、抑うつ48.1%、閉じこもり、運動機能の低下は34.5%と該当者が多く含まれていた。 転居高齢者には近所付き合いなど日常生活の変化が生じ、介護二次予防が必要な者が多く含まれることが明らかになった。今後は転居の影響を含めて詳細な分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の質問紙調査は、2つの自治体において実施することを計画した。両自治体とも協力が得られ、A自治体については計画通りH25年11月に調査を実施することができた。H25年度末までには大方の分析も終え、学会発表の予定である。もう一方のB自治体においては、11月の調査日が自治体の様々な調査と時期的に重複があり、高齢者に負担をかけると判断したため、自治体との話合いによりH26年4月に延期した。B自治体における住民基本台帳を活用した対象者把握、調査票発送準備は年度末までにすべて終了し、H26年4月に調査票の発送、回収を行った。また高齢者への質問紙調査の機会に、H26年度に転居高齢者の家族を対象としたインタビュー調査の協力者の募集を行い、協力者の確保もできた。 初年度の調査において対象把握は住民基本台帳を活用して行った。このため、2自治体とも対象とした地域の悉皆調査の形をとることができた。加えて訪問による回収方法を取ったため、回答が得られなかった対象者を一律に「非協力」として扱うのではなく、非協力と回答不能な状態(入院、入所、認知症をはじめとする心身の悪化状態、長期不在など)に区別して把握することができた。これも転居高齢者と地元高齢者の貴重な実態としてとらえることができた。 以上のことから研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は、H25年度に行った2自治体の調査結果の分析を、転居時期および転居からの時間経過の視点からさらに進めていく予定である。学会発表の他、論文としてまとめ投稿を予定している。 また計画どおり転居高齢者の転居後の適応に関する調査に着手する。転居高齢者が転居後に生活の再構築をはかるためには、転居高齢者を同居もしくは近居という形で受け入れた家族の関わりが鍵になる。このため転居高齢者の家族を対象に、インタビュー調査により転居後の適応を促すための方策を明らかにする予定である。調査は8月~9月を予定し、その後分析を行っていく。学会発表の応募、論文の投稿も予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に2自治体における質問紙調査を計画したが、一自治体における調査の実施がH26年4月に延期したため、調査票の発送、アルバイトの雇用、データ入力費用などの残額が生じた。 次年度使用額は、H26年度研究費と合わせて計画的に使用する予定である。具体的には調査票発送費用、アルバイト人件費、データ入力費、旅費、学会参加費、論文投稿料などに当てる予定である。
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