研究課題/領域番号 |
25463657
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
富永 真己 京都橘大学, 看護学部, 教授 (40419974)
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研究分担者 |
朝倉 隆司 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00183731)
朝倉 京子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00360016)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 看護師 / 組織特性 / Social Capital / 労働職場環境 |
研究概要 |
1.目的:看護師の労働職場環境の背景にある病院の組織特性を測定する尺度を開発し、信頼性と妥当性の検討を目的に調査研究を実施した。 2.対象と方法:倫理委員会にて承認を受けた後、デルファイ法による調査研究を3回計画し、うち2回をH25年度に実施した。兵庫県内の50床以上の規模の全病院(302施設)を対象に、看護部長宛てに無記名の自記式質問票を2回、郵送法にて実施した。今回、新たに先行研究及び聞き取りによる質的データを参考に病院の組織特性の測る尺度として”Social Capital and Ethical Indicators”の40項目を作成し、基本属性、施設特性、労働安全衛生体制に関する項目、Lake(2002)のマグネット・ホスピタルの組織特性の日本語版尺度、とともに調査項目として含めた。分析方法として記述統計を算出後、新たに開発した40項目について平均値の昇順で上位と下位の項目を確認した。また基本属性等による平均値の差を検討した。 3.結果:回収率は第1回目は26%、第2回目は25%、うち5割(N=39)が両回答者であった。回答者は女性、職位は看護部長、対象施設の従業員規模は50~249人規模、病床規模は100~199床規模がいずれも最も多かった。新たに開発した40項目の得点範囲は、第1回目は3.91-6.67、第2回目は3.99-6.70であった。平均値の得点結果では、上位10項目のうち"看護師達のそれぞれが専門職として真摯であること””看護師達が全体として信頼に値すること””個々の看護師が、リーダー(看護師長や主任)や同僚達から信頼され、尊重されていると感じること””リーダー(看護師長・主任)が、個々の看護師の能力を価値あるものとみなしていること”の4項目は両調査で認められた。一方、下位10項目はいずれも両調査で認められた項目で、最下位3項目は順位も変化はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、3か年三段階の構成による計画で進行する。平成25年度は第一段階として、Healthy Work Organization (HWO)の概念モデルを用い、Magnet Hospital(MHp)の看護実践環境の測定尺度を参考に、国内の労働衛生の課題を踏まえ、組織の健康において重要な看護管理者の管理方式等を反映した組織特性の尺度を開発することとした。また、同時 に尺度の信頼性と有用性を検討することとした。具体的な計画のうち、以下の(1)と(2)のために予定していた計3回の調査のうち、2回を終了している。 (1)組織特性の尺度の開発:①~④により得られた質的データを踏まえ尺度を開発する。①米国のマグネット・ホスピタルの看護実践環境の日本語翻訳版以外の尺度に関する文献、②HWOの概念モデルと共通性が認められる研究、③米国のMHpの学会やその他の学会などで収集した情報、④米国のマグネット・ホスピタル同様に看護師の離職率と健全な組織運営をする国内の病院の看護部長への聞き取り調査 (2)組織特性の尺度の信頼性と有用性の検証:①~③により開発した尺度の信頼性などを検証する。 ①看護管理者を対象に、開発した組織特性の尺度について質問票調査を実施、②得られたデータの統計解析(因子分析など)により尺度の信頼性を検証、③結果返却した協力施設の看護管理者からの意見を仰ぎ、尺度の有用性について考察する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、残り1回の調査を実施すると同時に、第二段階として、平成26年度に計画している以下の調査研究を進める。 (1)労働職場環境及び組織特性が組織の健康に及ぼす影響の検証 ①質問票調査の内容の再検討:HWOの概念モデルの組織の健康(看護師の主観的健康度、職務満足と、組織の看護管理者の職務満足、病棟科の離職率、疾病休業日数等)の内容とともに、調査票全体について、新たな先行研究の知見を踏まえ再検討、追加・修正する。 ②質問票調査の実施:兵庫県内を中心に中規模(看護職員数1,000人未満)の施設3~6病院に対し、兵庫県看護協会や民間病院協会等の協力を得て、看護師(約1,000人)と看護管理者(約100人)に対し、質問票調査を実施する。 ③関連性の検証:労働職場環境及び組織特性が組織の健康(看護師の主観的健康度、職務満足と、組織の看護管理者の職務満足、病棟科の離職率、疾病休業日数等)に及ぼす影響に関し、病院組織と病棟科毎について統計解析により(マルチレベル分析など)検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、Healthy Work Organization (HWO)の概念モデルを用い、Magnet Hospitalの看護実践環境の測定尺度を参考に、国内の労働衛生の課題を踏まえ、組織の健康において重要な看護管理者の管理方式等を反映した組織特性の尺度を開発すること、同時に尺度の信頼性と有用性を検討することを目的とした。具体的な計画として、平成25年度は、3回の調査研究を予定し、2回の調査を終了した。一方、残る1回の調査が年度内に完了しなかった。その調査の実施に係る使用額が残額としてなった。 平成25年度に予定していた残る1回の調査を、平成26年6月に予定している。その際に必要な経費として、使用する予定である。
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