研究課題/領域番号 |
25463659
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本赤十字広島看護大学 |
研究代表者 |
山本 加奈子 日本赤十字広島看護大学, 看護学部, 講師 (30438080)
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研究分担者 |
三島 伸介 関西医科大学, 医学部, 助教 (70454618)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腸管寄生虫症対策 / ラオス / 公衆衛生 / 学校保健 |
研究概要 |
研究1年目で、ラオス国北部の農村地域の小学校8校において、①検便を行い、腸管寄生虫症(回虫・鉤虫・鞭虫)の虫卵陽性率のモニタリング、②小学校に常に石鹸を常設し帰宅前に手洗いを確実に実施する介入を行った。対象校の選定に、調査可能地域で、同じような条件の学校を見つけることが難しく、様々な条件が統制できない状態で、腸官寄生虫症の陽性率にもばらつきがあったが、それぞれの学校で一定時期にベースラインをとり、ケースコントロールスタディーを行った。 ①については、2012年に2回の駆虫を、ラオスの標準的治療法であるMebendazole(MBZ)500mgの1回投与から、より効果的なMBZ100mgの6回投与に変更した学校を含めモニタリングした。2012年の検便結果と比較すると約2年間のうちに、ほとんどの学校で陽性率が減少傾向にあった。しかし、効果的駆虫を行った学校でも、回虫・鉤虫・鞭虫ともに、ほぼプレコントロールレベルと変化がない学校が1校あった。今回の調査方法では、投薬と検便の実施時期から、薬効に問題があるのか、再感染がおこっているのか、判断・評価することができない。今後、当該校で虫卵陽性率が低下しない原因について、さらに詳細な調査を進めていく。また、この学校が所在する村落を対象に、アクションリサーチの手法で、介入研究を行っていく。 効果的駆虫に加え、手洗い介入を行った学校では、ばらつきがみられるものの虫卵陽性率にある程度の減少傾向を示したが、手洗い非介入校では変化がない学校もあった。回虫は、比較的駆虫が容易な寄生虫であるため、駆虫薬の投薬方法に関わらず、手洗いにより再感染が防げる可能性が期待できる。さらに、効果的な駆虫を行った上で、学校での継続的・積極的な健康教育を行うことにより、鉤虫・鞭虫についても、陽性率を下げる効果が期待できると考え、今後の調査を継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①インフラの悪い農村地域を対象に研究をおこなっているため、例年にない想定外の悪天候により、アクセスできず、データがとれない小学校が発生した。 ②寄生虫症駆虫のプロトコール変更にむけたデータをとるために、駆虫薬の投薬方法をより効果的な分割投与(MBZ100mg×6回)に変更する予定だったが、現地の感染症対策センターと保健局との意見が食い違い、今年度は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①研究課題がインフラの悪い地域で行うことに意義のある研究でもあるので、現地スタッフの協力を得ながら調査時期を調整し、今後の研究を計画的に進めていきたい。 ②駆虫方法の変更の必要性について、これまでのデータを示しながら十分に話し合いを行ってきたが、現地の方針は変更できなかった。25年度は、以前に効果的駆虫方法として介入を行った経験のある学校のフォローアップという形で、インターバルをおいた。寄生虫の感染状況を確認しながら、来年度、駆虫方法を変更すべきかどうか、現地の研究者と十分に検討し、必要に応じ、根拠をもち実施していく。 学校での手洗いの励行により寄生虫症の虫卵陽性率を間接的に減少させる効果が期待できることから、今後は、小学校で持続的に手洗いがおこなっていけるよう、教員や上級生が主導にシフトしていく。また、感染率の高い学校、低い学校が把握できたので、これらの学校と村落の住民を対象に、アクションリサーチの手法で、介入を行い、健康教育介入の持続可能要因を明らかにすることを目的の調査を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、現地との調査の調整上、渡航旅費が1回分少なくなった。また、実施した現地調査においても、想定外の悪天候による悪路のため調査フィールドまで到着できなかったため。 当該年度に予定していた調査は、悪路のため渡航期間中に調査フィールドまで到着できず、一部データ不足になってしまったところもある。この地域の調査も含め、介入調査にはさらに、予算が必要になる事も予想されるため、介入調査にかかるコストとして、来年度、再来年度で有効に使用していく。
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