2014年から2017年の4年間に渡り、ラオス国北部農村地域の8小学校の学童と小学校が所在する1地域の住民を対象に、腸管寄生虫症に対する感染状況の動向の把握と小学校での石鹸と流水での手洗いの実施による対策の効果、およびその地域への波及の実態を検討した。対象8小学校を2校ずつ4群に分け、介入1年目のみMBZの単回から複数回(100mg×6回)への投薬方法の変更と、小学校での手洗いの励行の介入をおこなった。手洗い介入は、学校で手洗い用水の確保ができる4校を、複数回投与は、複数回の投薬が可能な4校を選択した。複数回投与を行なわない群は従来の単回投与をした。手洗い介入として小学校に常に石鹸を常設し帰宅前に手洗いを励行した。介入前後で検便を行い、回虫、鉤虫、鞭虫の虫卵陽性率の変化で評価を行った。2013年先行研究において行ったベースライン調査の結果と2017年3月の結果を比較した。 複数回投与と手洗いを行った群では、すべての虫卵の減少率が最も高かった。その他の群では介入後もベースラインとほぼ同等もしくは、若干の減少がみられた。少なくとも、回虫については投薬方法に関わらず、ある程度の駆虫効果が得られた上、手洗いにより再感染が防げる可能性が示唆された。また、本調査における検便は、駆虫薬投薬前に行っており、再感染の影響により駆虫効果判定が困難であるが、特に鉤虫は、MBZ単回投与を数年継続したとしても、駆虫には効果が期待されにくいことが示唆された。 最も虫卵陽性率の低かった学校をターゲットのその要因をインタビューと参加観察によって調査した。教員の衛生教育に関する意識が高く、主体的に感染学生には個別なフォローがなされていた。また、学校で手洗いを始めたことにより、両親や地域住民の衛生行動も改善される機会になり、学童を中心とした衛生行動の改善により、村内全体の陽性率が下がる可能性があると示唆された。
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