研究実績の概要 |
H26年度は①理論研究として文献調査、②実証研究として治療拒否対する意識調査を行った。 ①摂食障害の治療拒否に関する文献研究として、論点の整理を行った。その結果、判断能力が治療拒否時の対応に関する重要な要因であることが判明した。判断能力を中心にした過去の様々文献(精神疾患の判断能力、判断能力の測定法など)を収集し、次年度の摂食障害患者における判断能力測定研究の理論的土台を構築した。 ②摂食障害専門医に対して摂食障害患者が治療拒否を行った際の意識調査の結果を解析した。対象となったのは日本摂食障害学会に所属している医師であり、回答者は55名(回収率38%)であった。生命危機のある状態の患者が罹病期間が短い場合と長い場合において、強制的治療を選択する医師の割合は、それぞれ59.6%, 67.3%であり、有意な差は認められなかった。一方で、罹病期間が短い患者において生命危機がある場合と無い場合に強制的入院治療を選択する医師の割合は、それぞれ96.2%, 26.0%と有意に差がみられ、罹病期間が長い患者に於いてもほぼ同様の割合であった。家族が強制的入院治療に同意している場合と同意していない場合において、罹病期間の短い患者に対して強制的入院治療を選択する医師の割合はそれぞれ96.2%, 84.4%であり、罹病期間の長い患者に対して強制的入院治療を選択する医師の割合はそれぞれ96.2%, 69.6%(p<0.05)であった。以上から、強制的入院治療が選択される際には、患者の身体状況、家族の意向が重要な要素になっていることが明らかとなった。専門医にみられたこの傾向が、保健行政側でもみられるかどうかを調査するために、精神医療審査会の構成員を対象に追加の意識調査を計画し調査を行う予定である。
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