H28年度は、治療者の摂食障害患者の治療拒否に対する態度に関して、国際比較を行った。 調査対象は、米国と英国の摂食障害治療専門家、それぞれ85名づつとした。 初発の摂食障害患者の治療拒否時において、積極的に治療を行う割合は、米国・英国とも約70%程度であった。慢性の摂食障害患者の治療拒否に対して積極的に治療を行うことを選択する割合は、米国・英国とも約60%であった。これは、家族の同意が有る無しに関わらず差は認めなかった。日本においては初発の患者において積極的治療を90%が選択すること比較して有意に低い傾向がみられた。一方で、家族の同意がない場合の対応については有意な差が認められなかった。慢性の場合も同様で、家族の同意がある場合に限ってのみ、積極的な治療を選択する割合が有意に日本の治療者で多かった。 判断能力に関しては、摂食障害患者に何らかの判断能力の存在を認める治療者は70%程度であり、日本と同様であった。 欧米でも摂食障害の治療拒否に対しては最善の益を生命維持と捉えて、パターナリスティックな対応がなされる傾向が認められた。日本における、摂食障害患者の治療拒否に対する対応は標準的だと考えられた。一方で、患者の家族の意向の影響が日本では強くみられたことは、医療保護入院制度の存在との関連を疑わせるものであった。
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