(1)研究・臨床のスタッフにおけるリスク評価およびリスク・コミュニケーション能力向上のための教育プログラムの実践…医療機器セミナー・プログラム科目「臨床医工学の倫理問題」と、広域大学連携科目リベラルアーツ教育プログラム科目「医の倫理学」を担当し、医療機器開発・医学研究・臨床応用におけるリスクを含む倫理的課題の教育を実践した。また、看護師対象の研修において、グループ討論による臨床事例に即したリスク評価の論点整理と問題解決実践を試みた。期間内での教育実践から、教材における事例活用の必要性、対話型授業の導入の意義が確認された。 (2)異分野専門家間相互のリスクをめぐる対話…関連分野専門家(医学・生命科学、法学、哲学・倫理学、社会学・人類学、科学技術社会論等)の間の対話実践を実施した。具体的には、日本生命倫理学会シンポジウム報告「科学技術と生命倫理―リスクの視点から」を行った。期間内に行った対話実践の成果を踏まえて、複眼的視点を取り入れたリスク論の意義と問題点が明らかとなった。 (3)道徳的・社会的リスクの哲学・倫理学的検討…放射線被曝や人工化学物質に伴うリスクに加えて、食品関連(添加物、農薬等)、医療関連(ワクチン等)のリスクをめぐる言説分析を通して、考察を深めた。既発表論文「リスクをめぐる対立構図―「リスク論言説」とその批判的検討―」(2016)において提示した問題枠組みの有効性が確認された。
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