本研究は、岩手県釜石市で、災害被災地へのボランティア・ツーリズムと復興・地域活性化の関連性について実証的に研究するものである。平成25年度は、①使用概念の理論的検討、②釜石市の文献資料・統計資料の収集・分析、③関係者へのインタビュー調査・参与観察、の三点を実施した。 特に①を主要な作業として進めた。被災地への外部からの交流には複数の用語が使用されることから、実態を適切に表現しうる概念の把握を目指した。具体的には、A)復興ツーリズム、B)ダークツーリズム、C)ボランティア・ツーリズムの3つが頻繁に使用される。A)は国際的でなく、時限的という限界がある。B)は被災地住民の感情にそぐわない。C)はこれらの問題が少ない。国際的には"Disaster tourism"が使用されることも多いが、B)と同様の問題がある。これらから、「ボランティア・ツーリズム」が適切と考えられる。概念の比較検討は例が少なく、本領域の研究を進展させるための作業として意義があったといえる。 ②、③に関しては、3回の調査旅行により資料収集、参与観察、インタビュー調査を実施し、対象である「三陸ひとつなぎ自然学校」の活動の把握に努めた。釜石市でも震災後のボランティア活動者は減少傾向にある。その中で「三陸ひとつなぎ自然学校」によるボランティアの受け入れは、地域の復興に一定程度寄与している。この団体が受け入れを継続できている背景には、意欲的な受け入れプログラムの開発がある。参与観察では、ボランティアと団体が協働でプログラム開発を行う現場を調査した。こうした手法がボランティア活動者の満足を高めている可能性がある。またインタビュー調査では、外部組織と連携しプログラム開発を行っていることを確認した。総じて柔軟にプログラムを開発しており、その柔軟性が活動継続に寄与している。この点を明らかにしたことが、今年度の研究の意義である。
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