ユネスコが推進する21世紀型の観光モデルとして急速に関心が広がっている「クリエイティブツーリズム」の成立条件を明らかにし、それをツールとしてグローバル、リージョナル、ナショナルの3レベルでの都市連携を強める方策を実証的理論的に明らかにすることである。「クリエイティブツーリズム」とは「芸術文化活動を通じて地域住民とツーリストが触れ合い、文化遺産や地域の特性を学び、固有価値を創造する体験を重視する新しいタイプの観光である。 このため、クリエイティブツーリズムを世界に先駆けて提唱し、行政、アーティスト、ホテル観光業界等が連携して実践しているアメリカ、ニューメキシコ州サンタフェの調査をおこなうとともに、Creative Traveler's Handbookの著者エレナ・パッシンジャー氏を招き研究会を積み重ねた。2016年9月にスウェーデンのエステルスンドで開催されたユネスコ創造都市ネットワーク年次総会とエステルスンド大学が主催した学術シンポジウムに出席し、現地で展開されている「アーティザンフード」を活かしたクリエイティブツーリズムの現地調査を行うとともに、シンポジウムでは、「創造都市と生物文化多様性」という研究発表を行なった。これはクリエイティブツーリズムの発展のためには、都市や地域の生物文化多様性が固有価値を高める上で、有意義であるからである。 ここでの成果を踏まえて、11月に愛媛大学で開催された観光人材養成講座で、「創造都市とクリエイティブツーリズム」という講演を行い、2017年3月には、国連大学高等研究所石川金沢ユニットと小生が代表の科研費グループとが共催した研究集会でも、同様の研究発表を行なった。 また、文化庁の京都移転と新たな文化行政のあり方についてクリエイティブツーリズムを推進するなどの提案を論文「文化庁の京都移転とこれからの文化行政」として学会誌『文化経済学』に掲載した。
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