(1) 環境磁界モニタリングシステムの開発:無線通信システムとして,FM送受信器を用いたシステムを構築した。環境磁界を電力・情報として利用するFM送信機は部品点数が15点で構成でき,4.8 mW@1.5Vの発電電圧から動作することを確認した。環境磁界の情報を受けるFM受信機はPCを必要とせず市販のFMラジオでも代用できる汎用性を有する。(2)研究の統括:環境磁界は電力・情報として利用できる半面,ヒトの五感で認知することができない。一方,ソニフィケーションは,化学の音の可聴化やビックデータの解析認知法に代表されるように,異分野との連携を行うツールとして近年再注目されている。本研究の統括として磁界ソニフィケーションのコンセプトを世界へ向けて提唱した。 最後に,本研究により得られた知見として今後の展望として2つの問題点を明らかにした。1点目は環境磁界発電モジュールのサイズである。生活環境下の環境磁界発生源から十分遠方のエネルギー源を対象とした設計では,今回のような2.5 kg程度の重量を有する環境磁界発電モジュールが必要となる。これは通常の環境発電の用途を目指した応用では決定的なデメリットである。一方,コンセントからの電源供給による家電製品を対象とする場合,電源コードをクランプする電流センサ用CTを環境磁界発電モジュールに利用可能であることを明らかにした。2点目は環境磁界として注目した商用周波数を超える周波数での利用である。環境磁界発電装置の発電電力周波数依存性より,従前より知られている磁性体の鉄損・渦電流損の問題を如実に反映した。つまり,高い周波数においては低周波磁界用に設計した磁束収束コアを使用しないほうが有利であると判断した。
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