研究課題/領域番号 |
25502005
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研究機関 | 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター |
研究代表者 |
佐藤 啓市 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 情報管理部, 上席研究員 (00391110)
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研究分担者 |
武 直子 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 大気圏研究部, 上席研究員 (00633679)
大泉 毅 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 大気圏研究部, 部長 (10450800)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 対流圏オゾン / 窒素酸化物 / 揮発性有機化合物 / アクティブ捕集 / 多成分測定 / フィルターパック |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き曝露チャンバーを用いた捕集効率を求める実験を行い、オゾン測定条件の検討を行った。これまでの条件ではオゾン捕集用ろ紙を4段直列に繋ぐことが必要であったが、多成分同時測定を行うために1段ろ紙で捕集できる条件を検討した。吸引流量、相対湿度、グリセリン含浸濃度、ろ紙の厚さの条件を変えた実験を行った。グリセリン含浸濃度が0.5%~10%の条件では濃度が高いほど捕集効率が高くなり、表面上で水分が保持できる10%で最大の捕集効率となった。ろ紙の厚みについては、厚さが大きくなるほどガスとの接触時間が長くなり、捕集効率が高くなった。厚さ0.38mmのガラス繊維ろ紙を用いたときに、0.5~1.0L/minの吸引流量、10~90%の相対湿度の条件下で、1段で90%以上のオゾンを捕集できることが示された。 更に、オゾン、窒素酸化物自動測定器とフィルターパックを用いた野外並行測定により、測定条件と測定値の妥当性検証を行った。異なる厚みを持つNO2捕集フィルターを用いたフィルターパック測定値と窒素酸化物自動測定器の測定値を比較したところ、厚さ0.38mmのガラス繊維ろ紙を用いたときに、1段で90%以上のオゾンを捕集できることが示された。前記で決定したオゾン、NO2捕集条件において、自動測定器とフィルターパックの並行測定を2014年夏季、秋季、2014~2015年冬季に行った。両者の測定値について非常に良い相関(R>0.83)が得られ、自動測定器の測定値を基準としたオゾン平均捕集効率は0.5 L/minでは約94%、1.0 L/minでは約82%であり、NO2平均捕集効率は0.5 L/minでは約89%、1.0 L/minでは約80%であった。以上の結果から、オゾンについては自動測定器と整合性の取れる測定法が確立され、NO2については干渉補正するとほぼ整合性が取れる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では平成25年度に、オゾン、NO2、揮発性有機化合物(VOC)標準ガスを、アクティブ型捕集器が設置された曝露チャンバーに導入し、捕集効率を求める実験を行い、アクティブ捕集測定の最適条件を決定することを含んでいた。オゾンについては、平成25年度に行った検討結果では、捕集用ろ紙を4段直列に繋ぐことが必要であり、多成分同時測定を行うための測定法の改善を平成26年度に実施した。また、NO2についても自動測定器との並行測定により、測定条件を検討した。得られた測定条件下で、オゾン、窒素酸化物自動測定器とフィルターパックを用いた野外並行測定によって、両者の測定値が良好に一致し、オゾンとNO2の多成分同時測定法が実大気測定に適応できることを実証した。 これらの成果は第55回大気環境学会年会、International Aerosol Conference 2014で学会発表を行い、国際学術誌に投稿するための準備を行っている。また、関連研究についても学術誌に発表を行っており、着実な研究成果を挙げている。 NO2、VOCによる曝露チャンバー実験については、実験機器の調達が遅れたため実施できなかったが、これまでの研究知見で最適条件を決定するための予備的検討が進んでおり、必要な実験機器が調達でき次第、室内実験を開始する予定である。また、自動測定器との野外並行測定による本研究で開発した方法の実証実験については、研究分担者及び連携研究者との間でこれまで得られた実験結果のディスカッションが進められており、北海道及び新潟県の測定所において平成27年度に実証実験を行う予定で進めている。 以上の状況を鑑みて、本研究は研究目的に照らして、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
NO2、VOCによる曝露チャンバー実験を、必要な実験機器が調達でき次第実施する。NO2及びVOC標準ガス発生装置を用いた既知濃度のNO2、VOCガスを曝露チャンバー内に導入する。チャンバー内にNO2、VOCガスを捕集するフィルターパックを設置し、NO2、VOC測定のための最適条件を求める。その際に、オゾン、NO2、VOCが他の捕集フィルターとの接触により損失しないための捕集フィルターの組み合わせ順序についても検討する。一連の実験で決定した最適条件により、野外でのテスト測定を行い、野外測定への適応性について検討する。 最適化したアクティブ型捕集器(フィルターパック)、測定値の比較参照のための市販のパッシブ型捕集器、並びにオゾン、NO2、VOCの自動測定機を、寒冷地として北海道、温暖地として新潟県内の観測地点に設置して長期の並行モニタリングを行う。人体健康の影響評価に資する観点から都市地域を、生態系影響の評価に資する観点から遠隔、森林地域において実施する。この並行モニタリングは、研究分担者及び連携研究者と共同して行う。現在の所、寒冷地のモニタリング地点として国設札幌酸性雨測定局(都市地域)、国設利尻酸性雨測定局(遠隔地域)を、温暖地のモニタリング地点として国設新潟巻酸性雨測定局(都市郊外地域)、八海山展望台(森林地域)を候補地として選定し、並行モニタリングの実施のための必要な機材の調達や準備を進めている。様々な気象条件下での影響を検討するために、並行測定は平成27年夏季から開始し、各月で1週間連続実施する。 パッシブ型捕集器は1週間平均値、フィルターパック、自動測定機は24時間平均値を、大気中濃度測定値の評価に用いる。それぞれの測定値の時間変動、相関プロットの一致性により大気濃度測定の妥当性を評価する。得られた並行測定の結果から、気象条件による捕集効率影響の考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度はオゾン捕集の最適条件を決定する曝露チャンバー実験と野外並行測定を実施したが、これらの研究に必要な器材の多くは現有のものを活用することができ、必要な試薬、フィルター等の消耗品、データ整理PCの修理、学会発表、研究打ち合わせ旅費に使用した。 また、NO2、VOC捕集の最適条件を決定する曝露チャンバー実験については、必要な機材の検討及び調達に時間がかかり、年度内に購入することが出来なかった。野外並行モニタリングにおいても、必要な自動流路切り替え装置、流量コントローラー、ポンプ等の検討及び調達に時間がかかったため、当初計上していた物品費を使用することが出来なかった。以上の理由により、平成26年度に実施する予定の研究の一部が、平成27年度に実施することになり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
NO2、VOC捕集の最適条件を決定する曝露チャンバー実験を実施するために、ガス調圧器(約10万円)、空気精製装置(約30万円)、ガスボンベ(約30万円)、試薬(約10万円)、フィルター(約10万円)等の購入に使用する。 また、オゾン、NO2、VOCの自動測定機との長期の並行モニタリングを実施するにあたって、フィルターパック(約40万円)、パッシブ型捕集器(約20万円)、自動流路切り替え装置(約30万円)、流量コントローラー(約40万円)、ポンプ(約20万円)等の器材の購入、採取試料を新潟まで輸送するための送料(約5万円)に用いる。特に、これらの並行モニタリングに必要な経費は、関係者との打ち合わせの結果により当初の見込みよりも多くかかることが判ったので、平成27年度の配分予算と組み合わせて使用する。 その他の経費は、研究のための学会発表(約20万円)、論文投稿費(約10万円)等に用いる。
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