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2014 年度 実施状況報告書

エピジェネティック修飾と分子シャペロンによるレトロトランスポゾンの制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 25503003
研究機関九州大学

研究代表者

一柳 健司  九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70401560)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードエピジェネティック制御 / レトロとランスポゾン / 生殖細胞 / 分子シャペロン / DNAメチル化 / 小分子RNA / 転写後制御 / 減数分裂
研究実績の概要

マウス生殖細胞におけるレトロトランスポゾンのエピジェネティック制御機構を明らかにするため、Dnmt3L (DNAメチル化に関与)ならびにPld6(生殖細胞特異的な小分子RNAであるpiRNA合成に必須)の変異体および二重欠損変異体から生殖細胞を分離し、全ゲノムバイサルファイトシーケンシングでDNAメチル化状態を、RNA-seq解析で各レトロトランスポゾンの発現レベルを解析した。その結果、初期の生殖細胞(前駆精原細胞)におけるレトロトランスポゾンの制御にはDNAメチル化は重要ではなく、piRNAによる転写後抑制機構が重要であることを明らかにした。一方、減数分裂を開始した細胞(精母細胞)ではpiRNAによる制御よりもDNAメチル化による転写レベルでの抑制が重要であり、生殖細胞の発生段階にに従って抑制システムが大きく変化することを明らかにした。また、piRNAを介したDNAメチル化機構が提唱されていたが、網羅的な解析により、そのような機構はごく一部のレトロトランスポゾンだけで見られ、一般的ではないことを明らかにした。(投稿準備中)
さらに、Hsp90αの変異体を解析し、前駆制限細胞でのpiRNA合成が異常になることを明らかにした。piRNA合成に関わるタンパク質の発現は変化しないが、Miwi2が核移行できなくなっていた。レトロトランスポゾンのDNAメチル化には異常はなく、mRNAの産生量も変化はなかったが、タンパク質レベルでは10倍以上に発現が上昇しており、Hsp90αおよびpiRNAシステムは主に転写後制御に作用していると考えられる。(Ichiyanagi et al. Nucleic Acids Res 42, 11903-11911, 2014)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

piRNAを介したDNAメチル化機構の一般性を検証し、レトロトランスポゾン制御ネットワークを明らかにするという当初の計画は達成され、さらにpiRNAとDNAメチル化が各発生段階でどのように機能しているのかまで明らかにできた。また、分子シャペロンとpiRNA合成、DNAメチル化の関係も明らかにし、シャペロンの作用点まで考察できるに至った。

今後の研究の推進方策

Dnmt3LとPld6の変異体解析をさらに進める。特にDnmt3lについては全ゲノムレベル解析したことにより、レトロトランスポゾンに特化したものではなく、生殖細胞のリプログラミング機構という観点からも非常に興味深い知見を得ているので、今後さらに解析を進める。
Hsp90の研究テーマは今後、変異体の精母細胞での解析を進め、どうして減数分裂がストップするのかを明らかにし、その作用点となる分子の同定も目指して、トランスクリプトームやプロテオーム解析を進める。

次年度使用額が生じた理由

マルチプレックスで解析することにより、大規模シーケンサーにかかる経費を軽減できたため。

次年度使用額の使用計画

次年度においては、大規模シーケンサーによる追加解析や質量分析計を用いたプロテオーム解析(受託)を計画しており、その費用のために使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] HSP90α plays an important role in piRNA biogenesis and retrotransposon repression in mouse.2014

    • 著者名/発表者名
      Ichiyanagi, T., Ichiyanagi, K., Ogawa, A., Kuramochi-Miyagawa, S., Nakano, T., Chuma, S., Sasaki, H. & Udono, H.
    • 雑誌名

      Nucl. Acids Res.

      巻: 42 ページ: 11903-11911

    • DOI

      10.1093/nar/gku881

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Regulating Pol III transcription to change Pol II transcriptome.2014

    • 著者名/発表者名
      Ichiyanagi, K
    • 雑誌名

      Cell Cycle

      巻: 13 ページ: 3625-3626

    • DOI

      10.4161/15384101.2014.980704

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] SINEレトロトランスポゾンのエピジェネティック機能と制御2014

    • 著者名/発表者名
      一柳健司
    • 学会等名
      第86回日本遺伝学会年会ワークショップ
    • 発表場所
      長浜バイオ大学、滋賀県
    • 年月日
      2014-09-17 – 2014-09-17
    • 招待講演
  • [学会発表] Epigenome evolution in primates2014

    • 著者名/発表者名
      Ichiyanagi K.
    • 学会等名
      第16回日本進化学会シンポジウム
    • 発表場所
      高槻現代劇場、大阪府
    • 年月日
      2014-08-22 – 2014-08-22
    • 招待講演
  • [学会発表] DNA methylation and chromatin boundary formation at mouse B2 SINEs2014

    • 著者名/発表者名
      Ichiyanagi K., Ichiyanagi T., Hirafuku K., Inoue K., Fukuda K., Sasaki H.
    • 学会等名
      IIAS Research Conference 2014 ”Chromatin Decoding”
    • 発表場所
      国際高等研究所、京都府
    • 年月日
      2014-05-12 – 2014-05-15

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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