研究課題
ポリコーム複合体(PRC1/2)はクロマチンを構成するヒストンタンパク質への化学修飾を触媒し、その近傍に存在する標的遺伝子の転写を抑制するエピジェネティックな転写制御装置である。我々のこれまでの研究から、ポリコーム複合体のこの機能に RNA 分子が関わっていることが示されている。本研究課題では PRC1 と RNA 分子の機能的関連を明らかにすることを目標とする。昨年度までに行った native RIP 実験の結果として、PRC1 に結合する RNA 分子群を同定した。この結果を確かめるために、昨年度は紫外線照射によりタンパク質とRNA の分子間を架橋させた後に標的タンパク質に対する抗体を使って結合 RNA 分子を沈降させる PAR-CLIP 法を用いた実験を行った。PAR-CLIP 法を用いることで PRC1 に直接結合する RNA 分子群を同定できると期待された。抗体は PRC1 の構成タンパク質である Ring1B に対する抗体を用いた。PRC1 は複数のタンパク質から構成される巨大なタンパク質複合体であるが、RNA 分子がそれらのどのタンパク質に結合するのかをまず明らかにするために、抗 Ring1B 抗体による PAR-CLIP で沈降される PRC1 複合体中の RNA 分子を放射性同位体でラベルした後に SDS-PAGE で解析した。その結果、放射性同位体でラベルした RNA を含むタンパク質のバンドが、Ring1B タンパク質(40 kDa)付近には検出されずに、120 kDa 付近に存在することが分かった。このことは RNA と結合する PRC1 内のタンパク質が Ring1B では無く、120 kDa の分子量を持つ未知のタンパク質であることを強く示唆した。現在、大規模な細胞培養から生化学実験を行い、このタンパク質を同定するための解析を続けている。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Cell Reports
巻: 12 ページ: 562-572
10.1016/j.celrep.2015.06.053