研究課題/領域番号 |
25504005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北浦 靖之 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90442954)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脂肪酸 / 脂肪毒性 |
研究概要 |
遊離脂肪酸(FFA: free fatty acid)は脂肪毒性を有していると考えられており、近年FFA 濃度変化に加え、FFA 組成変化とメタボリックシンドロームとの間に密接な関係があると指摘されているが、その詳細なメカニズムに関する情報はほとんどない。本研究ではin vitroで培養細胞を用いて脂肪毒性の高い組み合せを同定し、in vivoで様々な疾病に伴う血中・組織内FFA 組成の変化を調べ、これらを総合的に解析することにより、新たなメタボリックシンドロームの危険因子としての「FFA プロファイル」を明らかにすることを目的とする。様々な培養細胞(HepG2, HT1080, MRC5, B16, Caco2, Ehrlich)に対して、脂肪酸(17 種)を単独で1~1000μM の濃度で作用させ、1~3 日間培養後に生細胞検出試薬(MTT)を加えて、生細胞数を測定した。その結果、細胞の種類により脂肪毒性が異なり、さらにそれぞれの脂肪酸を2種組み合わせることによる細胞毒性の変化について解析したところ、それぞれの細胞に対して細胞毒性のある脂肪酸が1価不飽和脂肪酸(MUFA: monounsaturated fatty acid)により、その毒性効果が抑制されることを見いだした。この結果から、脂肪毒性の強さはFFA組成により変化することが示唆された。今後、in vivoで様々な疾病におけるFFA組成を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では脂肪毒性の高い組み合せを同定することを試みたが、新たに1価不飽和脂肪酸が脂肪毒性を弱め、これが減少することによりその毒性が強くなることが示唆されたが、in vivoでのFFA組成についての解析が未解析である。今後、様々な疾病におけるFFA組成を解析し、脂肪酸による細胞毒性誘導メカニズムの違いと1価不飽和脂肪酸による阻害効果、さらに実験的に体内において1価不飽和脂肪酸を減少することにより、様々な組織での細胞毒性を解析することで、新たなメタボリックシンドロームの危険因子としての「FFA プロファイル」を明らかにすることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro での脂肪毒性の分子メカニズムの解明(1) 様々な脂肪酸により細胞を刺激し、一定期間後、細胞破砕液を調製し、mRNA およびタンパク質を抽出後、次の項 目について解析する。[1.細胞死誘導因子]活性酸素種、Ca2+の細胞内濃度変化を特異的蛍光プローブ、Caspas e の活性化、Bax、Badの発現量など。[2.生存シグナル因子]生存シグナルSrc ファミリー、PI3k-Akt、MAP キナーゼ経路の活性化など。[3.小胞体ストレス反応因子]小胞体ストレス反応3つの経路、それぞれ上流の因子(IRE1, ATF6, PERK)および下流の因子(XBP-1, ATF4)の活性化、プロセシング、発現量の変化など。[4.炎症反応因子]TLRを介した炎症反応の誘発に関与するNF-kB、JNKの活性化など。[5.脂肪酸組成の変化]細胞破砕液から脂肪酸を抽出し、LC/MS により分析する。 in vivo での脂肪毒性の解析(1) 様々なメタボリックシンドロームモデルマウス(ob/obマウス、DIOマウス)の血中、組織中FFAをLC/MSにより分析する。また、1価不飽和脂肪酸であるオレイン酸合成酵素SCD1(stearoyl-CoA 9-desaturase)の阻害剤であるA939572をマウスに投与し、オレイン酸の体内濃度を減少させ、様々な脂肪酸を投与することによる細胞毒性を組織障害マーカー(ALT, ASTなど)の血中濃度により調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度に脂肪酸の組合せによる細胞毒性の解析を行った結果、一価不飽和脂肪酸の減少により細胞毒性が上昇する可能性が示唆されたため、計画を変更し、次年度にin vivoで一価不飽和脂肪酸の減少を誘導する実験を行うが、この実験は当初の予定していた方法よりも困難で経費がかかることを見越して未使用額が生じた。 in vivoで一価不飽和脂肪酸の減少を誘導する実験を行うため、未使用額はこの実験の経費に当てることにしたい。
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