研究課題
コレステロール胆石症は、肝臓から胆汁中に分泌されるコレステロールが胆管・胆嚢内で固まって生じる結石によって引き起こされる症状であり、食の欧米化により近年日本でも急増している。胆石症発生の最大の要因は、胆汁中におけるコレステロールの過飽和であるため、コレステロール分泌を担う脂質トランスポーター・ABCG5/ABCG8の発現・機能変化を調べることは、疾患発症のメカニズムを解明するうえで極めて重要である。本研究では、蛍光タンパク質融合トランスポーターをハイドロダイナミック法により生きたマウス肝臓に発現させることにより、ABCG5/ABCG8の過栄養状態における細胞内トラフィキングへの影響について解析した。Abcg5-CFP/Abcg8-YFPを胆石症誘発食で飼育したマウス肝臓に発現させ、その詳細な動態を調べた結果、これらトランスポーターが粗面小胞体でヘテロダイマーを形成し、ゴルジ体から基底膜を経由することなく毛細胆管膜に到達すること、毛細胆管膜に到達する前に毛細胆管膜近傍に存在する小胞に蓄えられることを見出した。また、肝にコレステロールが蓄積した状態ではABCG5/ABCG8の細胞内小胞から毛細胆管膜への移行が促進することを見出した。さらにこの移行促進に関与するシグナル伝達系について検討したところ、Protein kinase A (PKA)の関与を示唆するデータを得た。以上の結果から、高カロリー食によりコレステロールが過剰蓄積した肝細胞では、コレステロールを胆管へ排泄するためにABCG5/ABCG8が細胞内小胞から肝毛細胆管膜へ供給されること、またこの機構にPKAが関与する可能性が示唆された。
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Hepatology
巻: 62 ページ: 1215 - 1226
10.1002/hep.27914
http://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/rinsho/