肥満・2型糖尿病モデルであるKKマウスにおいて、①肥満とインスリン抵抗性における魚油とピオグリタゾンの有効性が示唆され、②魚油との併用がピオグリタゾンの副作用と考えられている皮下脂肪蓄積を抑制すること、魚油並びにピオグリタゾンによる膵β細胞の保護効果が確認され、併用時には、よりランゲルハンス島の肥大化が抑制できることを前回の研究実績で報告した。 今回の研究では、魚油と併用することによるピオグリタゾン投薬量の減少を目指した最小有効量の検討を行った。本研究で用いたピオグリタゾンは、成人が通常使用する用量30mg/dayと比較した場合、0.006 wt%ピオグリタゾンで約15倍と非常に多く、ヒトにおける投薬量に近づけた低用量のピオグリタゾンの有効性を明らかにする。 実験①、②と同様にKKマウスを用いて、20 en%のサフラワー油を調合したコントロール食(Con食)と、Con食にピオグリタゾンを段階的に半分量(0.006、0.003、0.0015wt%)添加した、0.006食P、0.003食P、0.0015P食を与え、HOMA-IRをインスリン抵抗性改善効果の指標とし検討を行った。その結果、0.0015P群と0.003P群のHOMA-IRは、Con群と比較して大きな変化はみられなかったため、0.0015、0.003wt%のピオグリタゾンはインスリン抵抗性改善効果がないと判断した。また、0.006群のHOMA-IRは、Con群と比較して約40%低下したが、有意な変化ではなかった。今回を含めてこれまでの実験で、0.006wt%のピオグリタゾンによりHOMA-IRが有意に低下したという結果と、低下するが有意な変化ではなかったという結果が得られており、雄性KKマウスにおける0.006wt%のピオグリタゾンは、インスリン抵抗性改善効果がみられなくなる境界に近い用量であることが示唆された。
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