研究課題/領域番号 |
25504015
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
細野 崇 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80445741)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経細胞 / PC12細胞 / アミロイドβ / 硫化水素 |
研究実績の概要 |
本年度は硫化水素のドナーとしてのガーリック由来香気成分diallyl trisulfide(DATS)による神経細胞保護作用について、in vitroの検討を中心に行った。これまでの研究の結果、DATSにがん細胞増殖抑制作用やアポトーシス誘導作用があることから、まず、神経細胞に対する細胞毒性評価から行った。ラット副腎髄質褐色腫から単離されたPC12細胞を神経成長因子で神経細胞に分化させたモデルを用いて実験を行った。分化させたPC12細胞にDATSを作用させ、細胞傷害の有無を確認したところ、DATSはPC12細胞に対して細胞毒性を示さないことを確認した。次にamyloid βによる細胞傷害実験条件について検討した。ヒトamyloid β1-42をPC12細胞に作用させ、24時間後の細胞生存率を検討した。現在、再現性の高い実験条件が決まり、DATSと硫化水素ドナーとして広く用いられている硫化水素ナトリウムによる神経細胞保護の有無について実験を行っている。 DATSはタンパク質やペプチドのSH基と反応する際、副生成物として硫化水素を生じる。本研究では生成した硫化水素による神経細胞保護作用を想定しているが、DATSと反応するタンパク質のSH基の酸化修飾によって神経保護作用や細胞機能調節作用を示す可能性も考えられた。そこで、DATSによる酸化修飾タンパク質について検討した結果、タンパク質の酸化還元に関わるthioredoxinや分子シャペロンタンパク質であるHeat shock protein 27のシステイン残基とDATSが反応することが明らかとなった。DATSのタンパク質修飾が細胞機能に及ぼす影響についても、あわせて検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Amyloid βによる神経細胞の細胞傷害実験結果の安定性に問題があり、DATSや硫化水素による神経細胞保護作用の評価に至っていないため、全体として実験は遅れている。その一方、DATSによる神経細胞保護作用のメカニズム解明に重要なDATS酸化修飾タンパク質を同定し、2つの論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は遅れている神経細胞に対する保護作用を第一に検証を進める。その結果を受けて、in vitroでの毒性評価次第でin vivo試験を実施するか決定する。一方、食品成分が脳内の細胞機能に及ぼす影響については、食品成分が血液脳関門を通過し作用しうるかを含めて不明であることから、DATS投与したラットの脳内の薬物代謝酵素活性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Amyloid βを用いた神経細胞傷害実験の実験条件検討に時間がかかったため、消耗品の支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養に使用するAmyloid βペプチドの購入費用やアルツハイマー病モデル動物実験に係る費用として物品費100万(その内の65万は繰越額)を計上している。また、学会発表の旅費として20万円、論文掲載時の経費として25万円を計上している。
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