研究課題
脂肪酸β酸化系は、肝細胞において、エネルギー産生とケトン体産生を担い、2種の細胞小器官に存在する代謝系である。虚血性心疾患や脂肪肝などの生活習慣病のリスクは、高脂血症の栄養学的治療により回避できる。細胞内のミトコンドリアとペルオキシゾームに局在する脂肪酸β酸化系は全ての脂肪酸に共通した異化代謝系であり、その異常は肝臓を含む様々な臓器に脂肪沈着をもたらす。ペルオキシゾームの系については、全身の細胞における分布、核内受容体PPARを介した酵素誘導機構が明らかになってきたが、意外なことに、二つの代謝系のうち圧倒的に重要なミトコンドリアの系については、十分調べられていない。全身の肝臓および肝臓外臓器・培養細胞について、脂肪酸β酸化系酵素の抗体アレイを用い、酵素蛋白質の分布量を調べると共に、初代培養細胞を用いてin vitro probe assayと非放射性同位元素を用いたトレーサー実験で、脂肪酸β酸化能とケトン体産生能を測定する。さらに、幹細胞からの分化誘導実験により臓器特異性の成立過程を知る。以上によって高脂血症・臓器内脂質沈着是正における脂肪酸β酸化系の栄養学的な学術基盤を形成する目的で研究を行っている。
3: やや遅れている
肝臓・肝臓外臓器と培養細胞を用いて、① 細胞内:栄養代謝系の動態、② 細胞外:栄養代謝産物の濃度、③ 細胞問:細胞機能維持における相互作用の解析を行う。1. 25年度の計画:成体・発達過程の動物肝臓と肝外臓器の胎生から老化に至る各段階の特性を調べる。現在、定性的な結果は得られ、定量を行った。2. 26年度の計画:培養細胞(神経幹細胞、肝細胞;アストロサイト;神経細胞;セルトリ細胞;線維芽細胞;血管内皮細胞)と(神経幹細胞から神経細胞・星状膠細胞・希突起膠細胞に分化する過程)における特性を調べる。現在、初代培養細胞については、結果が得られ論文作成途上であるが投稿が遅れている。3. 27年度の計画:脂肪酸β酸化系を制御して解析を行う。細胞間の相互作用を調べる。論文投稿を行う予定である。
25年度の計画で、研究が遅れていた定量的な解析を26年度には遂行した。当初は、26年度の計画である培養細胞を用いた研究については、初代培養細胞の結果が予想より早く得ることができたため、論文作成を26年度の目標としたが、投稿には至っていない。神経幹細胞の分化と脂肪酸代謝については、26年度の主な研究課題とした。27年度は実験を補足して論文投稿を目指す。
25年度の受領額を概ね支出することができた。25年度の受領額を超えないように注意して支出したために、26年度使用額が0より大きくなった。26年度は実験計画に遅れが生じたため、27年度使用額が0より大きくなった。
ほぼ予定通り、使用する計画である。
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