研究実績の概要 |
本研究の目的は、糖転移させた機能性食品添加剤が形成する、数ナノメートルのナノ集合体構造中に難水溶性化合物を組み込んだ「ナノコンポジット」を形成させて、難水溶性の食品有効成分の溶解性及び吸収性を改善させることにある。 最終年度では、糖転移へスぺリジン、糖転移ステビア、糖転移ルチン、糖転移ナリンジンを基盤としたデータベースライブラリー作成も順調に進み、粉末化最適処方を速やかに探索できる環境がおおよそ整った。そこで、次世代型の機能性食品開発を目指して、難水溶性フラボンを糖転移ルチン存在下で固体分散化させたところ、難水溶性フラボンの溶解性や吸収性を大幅に向上することに成功した(Food. Chem., 190, 1050-1055 (2016))。ナノコンポジット構造解析を基にした発展研究として、新たなタイプの高次複合体を水中で形成させることにも挑戦し、その結果、クルクミン/糖転移へスぺリジン/水溶性高分子の複合体構造を形成できることを発見した。クルクミン/糖転移へスぺリジン/水溶性高分子の複合体形成によって、クルクミンの溶解度を1000倍以上に上昇させたまま、複合体構造を水中で安定に存在させることにも成功した(Adv. Powder Tech., 27, 442-447 (2016))。 一方で、糖転移ルチンの粉砕助剤としての能力についても見出すことができ、葉酸を糖転移ルチン存在下で粉砕すると100 nmよりも小さな粒子まで粉砕可能であること、及び葉酸の光分解を糖転移ルチンが抑制することを見出した(J. Agr. Food. Chem., 64, 3062-3069 (2016))。 以上の成果から、糖転移させた機能性食品添加剤を用いて、複数の調製手法を用いて、難水溶性の食品中有効成分を効率的に利用可能な、新規の機能性食品の開発手法を提案することに成功した。
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