研究課題
間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell以下MSC)とは中胚葉由来の骨、軟骨、脂肪、筋肉などへ分化する細胞であり、骨髄や脂肪組織などより単離できる。最近、MSCの臨床応用が広く検討されている。しかしながら、MSCを患者より採取することは侵襲が強く、時に困難な場合がある。また、ヒトより採取したMSCは継代数を経るに従い、その増殖能、分化能は低下する。これらの問題を解決するために、ヒトiPS細胞よりMSCを誘導する方法を確立し、モデル動物での治療効果を見ることを目的とする。平成27年度は、平成27年度に確立したヒトiPS細胞から中胚葉家前駆細胞と神経上皮系前駆細胞を経由して樹立したMSCを用いて、1)皮膚潰瘍モデルマウス、2)肝障害モデルマウスに移植してその治療効果を検討した。その結果、皮膚潰瘍モデルマウスには、MSCを潰瘍周囲に移植したほうが、それがない場合より、効率よく治癒することがわかった。また肝障害モデルマウスでは、ヒトiPS細胞由来MSCを投与した群がそれがないものに比べて治療効果が高いことが判明した。以上より、ヒトiPS細胞由来MSCは、これらのモデルマウスに対してin vivoで治療効果が認められたことから、安全性の問題さえクリアできれば臨床応用をする価値があることが示唆される。
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Genesis
巻: 53 ページ: 329-336
10.1002/dvg.22853