研究課題/領域番号 |
25505006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
藤原 成芳 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (50365425)
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研究分担者 |
高井 憲治 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (60121167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知症 / ヒトiPS細胞 / 神経分化 |
研究概要 |
認知症では神経幹細胞が存在し成人脳においても神経の新生が行われていることが報告され、「記憶」の形成に重要であろうと考えられている海馬において全体的な神経の脱落が見られる。従って海馬において必要な神経を再生し生着させることは認知症の根本的な治療につながると考え、誘導神経細胞を認知症モデルマウスの海馬に移植し認知症改善の可能性について検討することとした。 今年度は神経(前駆)細胞の誘導の最適化を中心に検討してきた。これまでの知見から、加える因子の種類や濃度、添加のタイミングを再検討し神経分化誘導プロトコールを確定させた。また来年度に向け移植実験を行い分化誘導神経細胞がマウス脳内に十分に定着するか検討し、さらにはモリス水迷路(MWM)を行い移植前と移植後での認知機能の改善についての検討も始めた。 まずヒトiPS(hiPS)細胞から胚様細胞塊(embryoid body: EB)を作製しこれをFNディッシュに播種した。RA, SHH, NOGの3因子で24時間後と72時間後に2回刺激し分化誘導した。分化誘導後8, 19日目の細胞についてNestin, ChAT, VGAT等の発現を調べた。その結果、ChATは19日目には約82.9±4.4%の細胞で発現が見られた。さらにVGAT陽性細胞は19日目に4.0±2.8%と非常に少ない割合で検出した。 移植の効果についてはMWM法により行った。移植後、移植群の中にプラットフォーム到達時間が有意に短縮しているマウスがいた。 今年度の結果からコリン作動性神経が非常に高い割合で分化誘導されていた。現在、治療薬としてコリンエステラーゼ阻害剤がある一定の効果を示すことから考えてもこの誘導方法は効果的であると考える。実際、移植により認知機能の改善したマウスの脳において移植細胞由来のchAT陽性神経は存在しており現在順次脳切片の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の当初の予定では、hiPS細胞からの神経(前駆)細胞の誘導の最適化を掲げていたが、これまでの予備実験の検討が功を奏しこの細胞を用いて移植実験及び空間記憶(認知機能)の改善についての解析まで進めることができた。これからまだ検体数を増やしさらに解析を進める必要はあるが、平成26年度以降の「誘導神経(前駆)細胞の移植と認知症の改善効果の評価」および「移植による改善メカニズムの解明」向けて順調に研究が進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によりベースとなるヒトiPS細胞からの神経分化誘導(特にコリン作動性神経)方法が確立できたことから平成26年度はさらに移植例数を増やし認知機能改善効果についてさらに検討を進めて行く。 移植実験については現段階で例数もまだまだ十分でなく、認知機能改善効果についてもまだまだ不安定な部分もある。より安定的な神経分化が必要なのか、移植方法が適切なのか、また移植方法に何らかの工夫がさらに必要なのか平成26年度の十分検討したいと考えている。 メカニズムの解明は主に平成27年度に行うことにしているが、移植により認知機能の改善したマウスの脳において移植細胞由来のchAT陽性神経は存在しており少しずつでも脳切片の解析を始めたいと考えている。また非常に少ない割合ではあったがVGAT陽性細胞も分化誘導されていた。近年の報告でGABA作動性神経の欠落と認知症の報告も見られGABA神経による認知機能改善効果についても検討する余地があると考える。検体数は多くはないが、移植により認知機能の改善したマウスの脳において移植細胞由来のVGAT陽性細胞を検出しているので引き続き解析を進めているところである。さらには移植により認知機能の改善したマウスにおいてホストのa7ニコチン性アセチルコリン受容体陽性細胞が増加していることが示された。こちらについても脳切片の解析を進め、移植神経の定着、分化や認知機能改善とどのように関連性があるか検討を始めたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
採択以前の予備実験が適切であったため、検討実験に使う試薬の購入量がやや予想を下回ったためと移植時に当初MACSを使い移植細胞を選別することを想定していたが当初の細胞の収率が低かったためにMACSに使う予定だった試薬を未購入だったために予定金額を下回った。現在これらの問題は解決されており平成26年度に予定位通り購入し実験を行うために繰越しという形となった。 MACSに用いるためのカラム、及び磁気ビーズ付き抗体と、分離能をチェックするのに用いるフローサイトメトリー用の抗体を購入する予定である。
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