研究課題/領域番号 |
25510001
|
研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
湯川 夏子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (40259510)
|
研究分担者 |
明神 千穂 近畿大学, 農学部, 講師 (90529752)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 認知症高齢者 / 料理活動 / 調理 / 認知症ケア / 料理療法 / 非薬物療法 / 介入調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、認知症高齢者に対して、料理活動を支援する方策を構築することである。本研究期間には(1)調理操作の難易度の解明(2)適切な支援方法の解明(3)料理メニューの整備(4)方策の普及と浸透 の4つを計画している。 本年度は、Aグループホームにおいて、特に(3)に関連し、昨年度別施設で実施した8種の「おやつメニュー」について料理活動を実施した。その結果、本施設においてもこれらのメニューは認知症高齢者のQOL向上に有効であることが示唆された。また介入調査実施の中で(1)(2)に関しても検討を進めた。 (4)については、これら料理活動支援の方策を「料理療法」として普及を図るため、これまでの研究成果をもとに著書を出版した。新聞(3紙)、調理学の学会誌、食物学や高齢者福祉等の専門誌など、合計11媒体で紹介されるなど、学会内外で高い評価を受けた。 さらに出版記念シンポジウムを開催し、約140名の参加者を得た(開催費用は科研費の負担外として実施)。介護福祉士、管理栄養士、教育関係者、一般市民、学生と参加者が多岐にわたり、また、討論では参加者から料理活動実践上の悩みなど多数寄せられ有意義な意見交換と「料理療法」普及の場となった。さらに、食育関係者を対象に講習会を実施する機会を得て1回開催した。また講演会も、一般市民対象に2件、食品学研究者対象に1件実施するなど、積極的に「料理療法」の普及を図った。 さらに、海外における先駆的な認知症ケアに関する情報収集のため、デンマークおよびオランダにて高齢者施設の視察を行った。デンマークでは、料理活動の見学を2件行い、支援の仕方等、共通点を見出すことがでた。しかし、レクリエーション的な実施に留まり、療法的な活用は見出せなかった。オランダでは、認知症ケアで先駆的な施設(ホグウェイ)を視察し、料理活動を含め生活全体を支援することの重要性を再認識した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度に予定していた一般書の出版を2年前倒しにして達成できた。これには、これまで開発してきたメニューについて、支援方法も記載する形でメニュー集として掲載することができた。また、支援方法のポイントや調理法の難易度についても概要を盛り込むことができ(1)~(3)の課題を概ね達成することができた。 本の出版にあわせ、シンポジウムの開催や、講演会や講習会の実施により、(4)の方策の普及についても、当初の計画以上に進展した。 昨年度より延期になっていた海外の料理活動支援の視察も実施しできた。 (1)~(3)の課題については、引き続き現在収集しているデータを解析して分析をすすめる予定をしており、「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)~(3)の課題、すなわち、調理操作の難易度や支援方法、メニューの内容について、収集しているデータを中心に解析をさらに進め、料理活動を支援する方策の充実をさらに図る。介入調査もさらにおこない、効果評価とあわせて、これらの事項の検討を行う。 方策普及のために、講習会や講演会を企画・開催して、料理活動の効果や支援方法についての普及をさらにすすめる。 当初、本年度において海外より研究者を招聘し講習会を開催する予定であったが、昨年度の海外視察の際の調査を通じて、料理活動の療法的活用に関する講習は見込めないとの判断をした。国内の他分野の研究者に、講演を依頼する計画に変更する予定である。その分、研修資料や教材の作成などの充実に費用を使用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初海外研究者の講習会講師への招聘を予定していたが、初年度の計画のおくれにより1年間延期した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度においても海外研究者の招聘が見込めない模様である。したがって当該費用を、国内の研究者を講師に招き、講習会を開催し、その謝金に使用する予定である。また、講習会を充実したものとするため、教材の作成に費用を使用する。
|