本研究の目的は、認知症ケアと予防を目的とした料理活動を支援する方策を「料理療法」として構築することである。本研究期間には認知症高齢者における1.調理操作の難易度の解明2.適切な支援方法の解明3.料理メニューの整備と、4.方策の普及と浸透の4つを目的とした。 1.認知症高齢者グループホームにおいて料理活動の観察調査を行い、個人の能力に見合った調理操作分担を行うための指標作成を目的とした基礎的データを得た。2.料理活動の観察調査をもとに、その成果を支援法付メニュー集へ反映すると共に、ノウハウを一般書としてまとめた。3.8種の支援法付料理メニューについて、料理活動の介入調査を実施した結果、参加者のQOLの向上等の効果が見られ、関西だけでなく関東圏の施設においても適合することが検証できた。また「おやつメニュー」を新たに開発し、評価と検証を同様に行った。 4.本研究成果をもとに一般書を出版した(2014年発行)。これは、新聞5紙の他、調理科学の学会誌や福祉の専門誌、テレビ、ラジオなど合計21媒体で紹介されると共に、学会招待講演を行うなど、学会内外で高い評価を得、料理活動支援の方策を「料理療法」として普及を図る大きな機会となった。さらに、主催企画として研修会2回を開催し(参加者合計約150名)、栄養士や介護福祉士等、専門職へ理念と支援方法の普及を図ると共に、シンポジウム2回を開催し(同計約240名)、一般へも普及を図った。この他に依頼を受け実施した講演会・講習会は合計27件、延べ対象人数は約1500名であった(主催:学会招待講演3件の他、各府県栄養士会、社会福祉協議会・市保健所、社会福祉法人、民間企業等)。さらに、ホームページやパンフレットを作成し、「料理療法」の普及と浸透を図った。 以上より、料理活動が認知症ケアと予防に役立つ、この方策を「料理療法」として構築し、普及を図ることができた。
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