研究課題/領域番号 |
25510005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
井上 孝之 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (40381313)
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研究分担者 |
音山 若穂 群馬大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40331300)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 対話 / 園内研修 / 被災地 / 研修ニーズ / メンタルヘルスケア / レジリエンス |
研究概要 |
平成25年度は、次の成果が得られた。保育学会大会時にホールシステム・アプローチを取り入れた研修会の実例を実践をとおして紹介した。また、岩手県沿岸部では、認定こども園の公開保育研究会で、保育参観後の研修会のあり方についてホールシステム・アプローチの手法「オープン・スペース・テクノロジー」を取り入れて実施した。これらをとおして、研修技法に向けた論点の整理を進めている。一方、福島県中通りでは、私立幼稚園の園長や教諭から、保育者の研修ニーズについてインタビュー調査した。その結果、戸外活動が制限されたことによるマイナスの影響が幼児にも保育者にも現れており、戸外活動の制限が解除されても、幼児や保育者の育ちに課題があることが明らかとなった。 さらに、園内研修の進め方については、保育学会の保育臨床相談研修会においても、ホールシルテム・アプローチを取り入れた実践を行っており、その参加者からも「対話」の持つ特性や、保育者への特有の研修技法について意向調査を行っている。 保育者研修に関する海外での最新実践例の把握のために、カナダの大学から情報収集を行っている。今後はその十分な翻訳と日本での実践への応用を試みたい。また、ファシリテーション技法に関する資料収集と保育者研修向け技法の開発、さらに評価方法の文献収集はまだ途中である。 そのため、次年度は、①保育者研修に適用する際の問題点の析出と論点の整理、②被災地保育施設のホールシステム・アプローチと取り入れた園内研修のサポート、③カナダのワークショップの手法を翻訳し、日本語版としての活用の3点を踏まえていく。 ※福島県中通りの幼稚園での課題は、日本幼少児健康教育学会(千葉大会)で報告した。さらに、この報告に関心を持った日本レクリエーション協会から特集記事の取材を受けた。レクリエーション有資格者向け機関誌「レクルー」6月号にて掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は東日本大震災の被災地域における保育者の支援を目的としている。疲弊した保育者の支援のために、「対話」を中心に据えた「ホールシステム・アプローチ」をとおして、震災ストレスやメンタルヘルスケア、放射線下での室内遊びの開発、保護者への保育指導等を、保育者のケアや専門性の向上にかかる課題(研修ニーズ)として把握し、それを園内研修によって改善することが研究のねらいである。この園内研修の方法を、持続的に発展可能な研修体制のプログラムとして開発するため、実践をとおした検討を実施している。 平成25年度は、対象としている岩手県沿岸部、福島県中通りへ出向いて、インタビュー調査を元に、疲弊した保育者に対する「ホールシステム・アプローチ」の可能性について検討した。福島県中通りについては、放射線下の保育、特に戸外活動に関する課題が多く挙げられた。そこで、その課題に関する園内研修でのサポートのあり方を模索しながら、協力幼稚園との連携も図ることができている。しかし、一方の岩手県沿岸部では、インタビュー調査を実施しているものの、各地域、各施設の進捗状況が大きく異なっており、研究に協力していただく施設を決定するまでには至っていない。さらに、子ども・子育て会議を受けて、それぞれの地域の保育施設の事情も異なっており、長期的展望に立った協力施設の選定が必要となっている。本研究代表者は、岩手県沿岸部の2自治体の子ども・子育て会議の委員でもあることから、協力施設の選定にも慎重さが求められている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題については、大きな変更は予定していない。しかし、岩手県沿岸部と福島県中通りでは、東日本大震災での被害状況がもとより大きく異なっている。本研究課題では、この二つの地域を「ホールシステム・アプローチ」を用いた園内研修のサポートを同一的に行うことで研究計画を作成している。しかし、被災地の状況は常に変化してきており、現時点においては、岩手県沿岸部の保育施設からの協力は得にくい状況になっており、反対に福島県中通りの保育施設では、積極的な研究協力の体制が出てきている。そのため、二つの地域を均一的にまとめていくような研究成果が出せるように岩手県沿岸部の保育施設にも協力を求めていくが、今後の被災地の復興の状況(子ども・子育て会議の結果なども含める)によっては、二つの地域への介入の度合いに差がでることも懸念される。
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次年度の研究費の使用計画 |
出張を取りやめたため。 福島市幼稚園への視察調査
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