本研究は東日本大震災の被災地域における保育者の支援を目的としている。被災した保育者の支援のために、「対話」を中心に添えた「ホールシステム・アプローチ」をとおして、震災ストレスやメンタルヘルスケア、放射線下での室内遊びの開発、保護者への子育て支援等を保育者のケアや専門性の向上にかかる課題(研修ニーズ)として把握し、それを園内研修によって改善することが研究のねらいである。 平成25年度は対象としている岩手県沿岸部、福島県中通りでインタビュー調査をもとに、疲弊した保育者に対する「ホールシステム・アプローチ」の可能性について検討した。 平成26年度は岩手県沿岸部は、仮設園舎で自由に保育できていたが、新築園舎に移転したことで、子ども守ることへの責任を負担に思う職員へのメンタルヘルスケアが必要になった。福島県中通りでは、戸外での活動が制限されていたが、制限が解除されても、若手の保育者は園庭での保育経験が皆無であったため、戸外遊びの研修が必要となった。 平成27年度は岩手県、秋田県での研究成果の報告とシンポジウムを実施した。当初予定していた福島県中通りでの開催は登壇予定の関係者らの辞退により中止した。しかし、2地域において実施した復興に向けた保育の取り組みや園内研修のあり方は、参加者の学びの場となった。 平成28年度、福島県中通りの保育施設においてインタビュー調査を実施した。福島市は震災後の出産ラッシュで待機児童も増えており、震災後に一気に減った園児が定員数を超えるほどに戻っている。しかしながら、福島の保育者養成校を卒業した学生も福島の保育施設へ就職しないため、施設によっては保育者不足で定員まで受け入れられないことが待機児童の一因にもなっている。保育者の園内研修すらままならない状況へと変化している。
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