研究課題
がん患者家族は看病などの身体的ストレスの他、治療方針決定、金銭的問題など心理社会的なストレスも受けている。したがって、家族は「第2の患者」と呼ばれ、治療とケアの対象であることが知られている。死別は人生の中で最も大きなストレスの一つであり、死亡率・精神疾患罹患率・身体疾患罹患率・自殺率上昇などと関連している。遺族に対するケアは「後治療(postvention)」と呼ばれている。特に、高齢者においては死別がうつ病発症に関する最大のリスクファクターであり、精神・身体・社会・実存面などで様々な苦悩を抱える高齢者における遺族ケアは重要である。埼玉医大国際医療センター精神腫瘍科では、がん患者遺族を対象とした「遺族外来」を設置し、死別後に苦しむ遺族に診療を通したケアを行なっている。本研究は、継続的な遺族ケアに必要な要素を明らかにし、ケアシステムを構築するため、後方視的調査、包括的ケアシステムに関わる医療・福祉従事者を対象としたインタビュー調査をフォーカスグループの形式で実施した。これは、外来受診に困難を伴う高齢遺族の状況を反映させることを目的とし、受診困難な高齢遺族への具体的な対応を検討するのに役立った。また、遺族外来受診患者の後方視的調査結果からは、死亡者(がん患者)が高齢であるほど、遺族はその後に精神医学的診断がつきやすい状況が明らかになり、その結果を国際学会で発表した。さらに、精神医学的治療を希望した、高齢がん患者「家族」から患者の死と共に高齢がん患者「遺族」へと移行した症例を検討し、受診可能な高齢者、受診不可能な高齢者の双方に対して、特徴や必要なケアを検討することができた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Palliat Support Care
巻: 11 ページ: 1-5
巻: 13(6) ページ: 1787-1790
10.1017/S1478951515000541.