研究課題/領域番号 |
25510013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 女子美術大学 |
研究代表者 |
山野 雅之 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (70191369)
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研究分担者 |
齋藤 啓子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (20147903)
山口 悦子 (中上 悦子) 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60369684)
鈴木 理恵子 女子美術大学, 芸術学部, 准教授 (60635001)
坂倉 杏介 慶應義塾大学, 付置研究所, 講師 (90458935)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Art and Health |
研究概要 |
平成25年度は、研究代表者を中心に調査対象施設との関係構築や調査実施に向けての調整に重点的に取り組んだ。具体的には、今年度中の調査完了を目標としていた東京都健康長寿医療センター、介護老人保健施設セアラ逗子、特別養護老人ホーム玉成苑に加え、心身障害児総合医療療育センター、北里大学病院、国立精神神経医療研究センター病院の各施設において実践(ヒーリング・アートによる環境改善プログラムの実施やワークショッププログラムの実施等)を行いながら、病院職員等との間に関係を築き、調査の許諾を受けるなどの調整を行った。これら調整が終了した施設に対しては、26年度に実際の調査を実施する予定である。なお、都立小児総合医療センター、大阪市立大学医学部附属病院においては予定していた調整はすでに終了し、具体的な調査日程の計画段階に達しており、まず調査に取りかかれる施設である。がん・感染症センター都立駒込病院については、25年度中に小児病棟・外来、緩和ケア病棟とも聞き取り調査を終了し、書き起こしデータも作成済みで調査の全プロセスを終了している。 また、分担者・研究協力者同士の打ち合わせ会議に関しては、直接会合を持つ形で2回、ウェブ会議の形式で2回開催した。その他、名古屋で開催された「医療の質とアート」研究会メンバーとの会合にも出席した。さらに情報収集のため、アートミーツケア学会他プロジェクトに関連する学会、会合やシンポジウム、セミナー等に手分けして出席した。25年度は未だ予備調査の段階ではあったが、成果の進捗の一部を学会、記事にて報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、アートによる医療施設環境と患者を主体とする医療関係者・病院関係者のQOL向上を探求することが主目的の一つである。 本年度は、研究代表者を中心に調査対象施設との関係構築や調査実施に向けての調整に重点的に取り組んだ。 設定した主たる調査方法はインタヴュー形式である。 ナラティブの共同構築としてインタヴューを行うため、医療関係者や病院関係者との信頼関係が重要である。故に関係性の構築には慎重をきした。当然のことながら病院職員等との間に関係を築き、調査の許諾を受けるなどの調整を行うことには時間を要しするものだが、外部からの調査者にとって、多忙な医療関係者との日程調整は予想以上に難しいものであった。 また、本研究の目的に沿ったインタヴュー調査を行う時期は、アート活動実施直後ではなく、一定期間をおくことがふさわしい。医療環境での日常生活の中で、医療・病院関係者や患者・患者家族によって発見され、意識化されたアートの役割や存在意義を収集・抽出するためである。本年以前に実施を完了していた施設についてはインタヴュー調査を終了したが、本年度に新たに実施され、研究対象となっている4カ所の医療環境整備におけるアート活動についての調査は、万全を期するために準備段階までにとどめることとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、研究の第1段階のうち現地調査が終了していない対象施設に関しては継続して調査を行い、データ収集が出来、テキスト化されたものから順次、継続して分析を行う。データベースの構築と公表(ホームページまたは出版)は適宜に行う。次に研究の第2段階として、日本におけるArt and Healthとして行われているアート活動の特徴や課題を明らかにし、その問題と要因とを明らかにしていく。このため第1段階で収集されたデータの検討会を、継続的・定期的に実施する。研究討議を活性化するために、新たに「医療の質とアート研究会」のメンバーを中心に、連携研究者や研究協力者を加えることも考慮する。直接の会合は年2回程度、またウエブミーティングのシステムを利用した討議を必要に応じて開催する。これらの分析結果が出たのち、第3段階へと移行する。 平成27年度は、第3段階として、第2段階で特定された問題とその要因に対して、医療の改善活動の手法も応用しながら、現在の日本の医療や福祉現場の実情にあった「アート活動導入のための方法論」(仮説)を組み立て、この方法論に基づいて対策案を立案する。まず、第2段階で得られた知見をもとにあらかじめプロジェクトの評価系を考案する。次に対策案のうち、実施可能なものを組み合わせてパイロットスタディを組み、方法論の検証を目的に、研究チーム(分担者・研究連携者・研究協力者)の施設と協力しながら実施する。プロジェクトは3か月~6か月の範囲で終了し、評価系に基づいてデータ収集を行う。プロジェクトで収集されたデータを分析し、実施前の方法論に修正を施す。結果・成果はホームページや出版物(論文、書籍、報告書、学会発表論文集など)を通事で公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査の前段階としての医療環境整備に関わるアート活動(アート制作と設置のプロジェクトとアートを使ったワークショップ)を、①心身障害児総合医療療育センター、②都立健康長寿医療センター(緩和ケア病棟)、③北里大学病院新病院、④国立精神神経医療研究センター病院の4カ所において追加実施し、その作業に時間を要し現地調査が平成25年度は3件程に留り、ホームページ等での成果報告までは至らなかった為。 平成25年度までにアート活動を実施している都立小児総合医療センター、介護老人保健施設セアラ逗子、特別養護老人ホーム 玉成苑、大阪市立大学医学部附属病院に、新たな4カ所の調査対象施設が加わり、Art and Health活動のデータベースを作成する調査準備が整ったことで、平成26年度は、現地調査が終了していない施設の調査を継続して行っていく。さらにデータ収集が完了しテキスト化されたものから順次、分析を行い、データベースの更新と公表(ホームページまたは出版)は適宜進める予定である。
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