最終年度は、本研究において開発した「介護者ケアマネジメントにおけるアセスメントツール第1版」をケアマネジメント過程において実践活用し、ツール活用の効果を明らかにするとともに、活用方法や活用システムについて検討した。調査対象としたのは3県12市町村の18事例であり、ツールを活用したケアマネジメント実践と実践後のヒアリングを行った。ヒアリングの対象者は実践事例の支援者(居宅介護支援事業所18名、地域包括支援センター18名)である。ヒアリングの調査項目はスクリーニング、アセスメント、プランニングの各局面における支援者の視点の変化、ツール活用時の介護者の様子、モニタリングでとらえた介護者の変化、およびツールの活用性、活用システムについての意見である。調査の結果、このツールはこれまで把握できなかった介護者のニーズを捉えられるようにすることが明確になった。 ツールを活用したケアマネジメントにおける介護者の変化として、介護で困っていたことが解消された、不安の軽減、精神的な安定により気持ちが穏やかになった、孤立感が解消された、あきらめていた趣味活動や人との交流等に取り組むことで、外出の機会が増え、以前より前向きになった、自身の健康等を気遣うことができるようになった等、どの事例も介護負担の軽減につながる状況が確認された。支援困難事例、認知症の事例、虐待のリスクがある事例、孤立のリスクのある事例等におけるツールのさらなる有用性が指摘されるとともに、ケア会議を地域ケア会議として開催することによって、介護者の介護の苦労を多職種が理解することにつながること、それぞれの情報から介護者の地域生活全体を捉えることができること、介護者がその地域の生活者であることから地域課題を捉える場となって効果的な地域の社会資源の発見につながることが確認された。
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