研究課題/領域番号 |
25510017
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
望月 茂徳 立命館大学, 映像学部, 准教授 (00454504)
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研究分担者 |
鈴木 岳海 立命館大学, 映像学部, 准教授 (20454506)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ケア / インタラクション / インタラクションメディア / 遊び / メディアアート |
研究実績の概要 |
ケア現場におけるインタラクティブなデジタルメディアの開発に関する本研究においては、ケア現場におけるデジタルメディア、アートや遊びを交えた体験的な映像装置やガジェットと呼ばれる高度デジタル玩具の開発を軸に、平成26年度は以下の研究を行った。 まず、子供向けの側面として、身体遊びを行いながら子供同士あるいは保護者を交えた関係構築を行うための幼児向けとして手芸素材に皮膚接触センサーを組み込んだぬいぐるみ型デバイスおよびダンスプログラムを組み合わせたパッケージを開発し、高槻現代劇場(大阪府高槻市)でのワークショップの実施を行った。また、ブリコラージュの手法を用いた創作ワークショップを青山学院大学(東京都渋谷区)にて行った。さらに、小学生を対象に食とコミュニケーションを活性化するためのデジタルデバイスの開発を行い、静岡文化芸術大学(静岡県浜松市)においてワークショップの実践を行った。 また、高齢者施設におけるデジタルメディアの開発も並行して行い、大阪府堺市にある通所介護事業所の協力のもと、場の空気・空間づくりに関与するデジタル作品の開発を進めた。これは介護施設の空間に親和性のある黒電話型の筐体をもった据え置き型のデバイスであり、その機能として偶発的なコミュニケーションを誘発しようとすることで、ケアする/される立場を相対化させ、ケア現場への気付きと転換を行う可能性がある。この取り組みにおいては、アートミーツケア学会2014年度総会・大会(デザイン・クリエイティブセンター神戸、兵庫県神戸市)およびインタラクション2015(日本科学未来館・東京国際交流館、東京都江東区)において研究発表を行った。 さらに、立命館大学生存学センターと連携しながらデジタルメディア技術と老い、身体を切り口とした研究会「身体とテクノロジー:アンドロイドは身体と老いの夢を見るか」(立命館大学、京都府京都市)を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ケア行為・空間をアートや遊びを用いて変換し、主体的な参加を促そうとするインタラクティブなデジタル機構を備えるデジタルメディア開発の方法論が、ケアされるものとケアするもの、そしてケアを見守る存在となるべきものにおける新しい「あいだ」となり、ケアの主体性の再確保と間口の拡大が可能か、開発実践を行いながら考察することを目的としている。平成26年度においては、育児に関する開発実践として、3件ワークショップを行うことができ、体験者によるアンケート・コメントおよび施設職員からのヒアリングを行うことができた。このヒアリング事例の分析は前年度分を含めて行うことが課題となるが、実践事例の蓄積を行うことができた点は、当初の予定に対して概ね順調に進展しているといえる。また、高齢者施設におけるフィールドワークを元にした開発実践に関して2件の学会発表を行うことにより、第三者との議論を行うことができ、当初の予定を含めて概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、最終年度として、これまでのケアの現場におけるデジタルメディアの開発事例の蓄積の整理、分析を行う。この過程においては、連携協力者に評価を受けることで到達点と課題の焦点化を行う。また、研究成果の発信にも本格的に取り組むことにより、学会や研究会等で発表することに加え、本研究の開発物がエンターテイメント性や芸術性のあるデジタルメディアであることや、映像を用いたフィールド・ノートを制作していくことの強みを生かし、映像上映や美術展示などによる効果的な発信を一般向けに行なっていくことを狙う。これにより、直接ケアに携わる/携わらないに関わらず、ケアに関して幅広く当事者意識をもつための方法について議論・検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィンランドのケアの現場におけるリハビリテーションやレクリエーションのフィールドワークを予定していたが、世界保健機関(WHO)の発表において、ヨーロッパでのエボラ出血熱感染拡大はほぼ避けられないとの見方が報告された。これを受けて、ヨーロッパだけでなく日本国内での社会情勢を鑑み、当初予定していた調査旅費を中心とした予算を執行することができなかった。 研究で使用する撮影機材の選定については、音声データの出力を制御する機材を整備した一方で、撮影機材の選定において検討するにとどまった。その理由として、これまで主流であったHDVの4倍の解像度で記録することができる4K撮影用の汎用的ビデオカメラが出回る状況となり、撮影に必要な解像度と今後の映像素材の保存と活用を考慮する際に、機材整備の選定に困難な状況となった。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの映像素材を保存するためのDVD製作を実施する。 研究分担者と研究協力者、現地コーディネーターとの日程調整を十分におこない、フィンランドでのフィールドワークをする。また高齢者施設と高齢者というフィールドワークの対象の特性に合わせた撮影機材の選定を十分におこない、撮影機材を整備する。加えて、最終年度として、これまでの研究で蓄積された映像素材を整理、分析し、編集を円滑に行うための機材を整備する。今後の映像活用の方策も志向し、データ管理に関わる機材についても検討する。
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