研究課題/領域番号 |
25510018
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
喜多 千草 関西大学, 総合情報学部, 教授 (10362419)
|
研究分担者 |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20314073)
加藤 隆 関西大学, 総合情報学部, 教授 (90268318)
吉野 孝 和歌山大学, システム工学部, 教授 (90274860)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | コミュニケーション支援 |
研究概要 |
本年度は問題探索的な要件定義を主に行った。 参加する研究者全員が集まっての勉強会は二回開催し、研究課題遂行の問題意識の擦り合わせや、関連研究の紹介等を行い知見を深めた。また、勉強会に招いての医療関係者との意見交換・討論などは、現場視察と意見徴収の計画と合わせ、訪問して聞き取り調査という形にして行った。聞き取り対象者は、クリニックを経営する医者、地域中核病院の訪問看護ステーションの訪問看護士のグループ、大学病院の救急担当経験のある医者、ホスピスの医者、地域中核病院の元医長、高齢者施設経営者などである。 こうした聞き取りから、DNR(Do Not Resuscitate)およびDNAR(Do Not Attempt Resuscitate)のありようとその問題点についてや、ACP(Advance Care Planning)や患者の意思の揺れ動きについてのケアの必要性などについて、さまざま問題点が浮き彫りになった。また関連する研究の存在についても示唆を受けた。また医師らへの聞き取り調査からは、患者とのコミュニケーションのありようを変革するためには、根本的な保険制度の見直しや拘束力のあるガイドラインの策定などの、大きな社会的な改革が必要とされていることも窺い知られた。こうした聞き取りの内容をふまえて、作成するツールは、ACPの一環と捉える方がよいこと、また想定する主たる利用者は、既に終末期に入った患者ではなく、むしろ将来を見据えて、終末期の患者の死を看取った経験を持つ家族を対象としたほうが有効ではないかということなどがわかって来た。 認知心理学的アプローチとしては、本年度は利用端末として想定されるタッチパネルインタフェースの機器について、ユーザビリティテストの方法論に関する研究を進めた。また哲学的アプローチでは、決断を迫られることの持つ意味についての先行研究の整理と考察を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標はシステムの要件定義のための研究活動を行うということであった。 勉強会に医療関係者を招くことも計画していたが、多忙を極める現場の方々の意見を聞くためには、こちらから訪問して聞き取りを行うほうがよいことが判明したため、医療現場の視察と意見徴収を行うという計画と合わせて行うことにした。その結果、聞き取り対象者から有益な示唆を得ることができた。 また、次年度以降のユーザビリティ評価に備えた実験を含んだ研究も行うことができ、哲学的考察も進められたため、要件を明らかにするための探索的な研究のフェーズとしては研究目的は達せられたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はプロトタイプ作成に向けて、要件定義をさらに進める。特に聞き取り調査から、患者の意思表示を伝える文書の書式は比較的流通しているものの、それをシェアする方法のほうが必要度が高いこともわかって来たため、表明した意思をシェアしやすい方法の検討を行ってプロトタイプを実装し、ユーザビリティ評価へとつなげていく。さらに、こうした意思表示の持つ意味についての哲学的考察をさらにすすめ、作成しようとするツールが文化的・社会的にどのような位置を占めることになるのか検討し、研究成果のより有意義な位置づけにつなげたい。 また、既存の事前指示書・リビングウィルなどの内容調査を本格化させるとともに、それらの内容を整理して検索しやすく簡易データベース化する。このデータベース検索サイト構築のためのツールの改良は既に初年度にも行い、これに備えてある。この内容が充実させられれば、このデータベースも公開して研究成果としたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた、医療関係者を講師に招いての勉強会の開催が、医療現場の視察・意見徴収と合わせての聞き取りに変更されたため、謝礼として想定していた予算を使わずに済んだため。 コーディング謝礼などに振り替え、より完成度の高いツールの開発を目指す。
|