研究課題/領域番号 |
25510021
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研究機関 | 羽衣国際大学 |
研究代表者 |
渋谷 光美 羽衣国際大学, 人間生活学部, 准教授 (70567635)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フィリピンでのコミュニティケア / ベトナムでの介護事情 / 韓国での介護事情 / イギリスでのコミュニティケア / 介護福祉労働の特性 / 研修の機会 / 異文化ケア / 介護福祉の思想 |
研究実績の概要 |
前年度の現地調査結果を基に、(1)アジア学術会議の国際カンファレンスで、フィリピンでのコミュニティケア展開が持続可能な支援として発表し議論できたこと、(2)コミュニティケアをキーワードに、イギリスでの現地調査も実施できた(計画当初のシンガポール調査を変更して実施)こと、(3)イギリス、アジアでの現地調査結果を基に、約100名が受講した市民講座で「コミュニティケアの理念と実践――イギリス、そしてアジアでの展開を通じて」をテーマに講義し、アジアの介護人材送り手国の介護事情と人材養成への関心を社会的に喚起できたこと、(4)プサンの老人ホームでの現地調査結果を、韓国での障害学国際カンファレンスで発表したことと、その際に、2都市での老人ホーム、在宅事業所、虐待防止センター、認知症予防センター等での現地調査も実施できたこと、(5)介護福祉学会の発表では、フィリピンでのアンケート調査結果分析を発表し、議論できたこと、(6)ベトナムでの調査結果を基に、論文発表ができたこと、(7)EPAによる外国人介護福祉士2名へのインタビュー調査が実施できたことが、大きな成果であるといえる。 とりわけ、アジア学術会議では、地球環境をテーマとした自然科学系研究者が大半を占めていたが、ハード面とソフト面双方からの、人的環境としての持続可能な支援のあり様としての問題提起に賛同意見も得られるなどの成果があった。さらにコミュニティケアをキーワードに、イギリスでの現地調査が実施でき、イーストアングリア大学の社会福祉学科の教授の方、元ソーシャルワーカーで現在は施設のコンサルタントの方、ホスピス職員の方へのインタビュー調査が実施できたことは、フィリピン、ベトナム、韓国での介護事情を把握・分析する点はもとより、介護福祉労働の普遍的特性や介護人材教育に関する研究の上で、大きな示唆・教示を得ることができた点での成果でもあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アジア3カ国(フィリピン、ベトナム、韓国)とイギリスでの現地調査について、フィールド確保と調査実施までの諸条件を整えるのにはかなりの困難が伴うが、予想以上に、初年度と今年度で実施できる可能性が高まり、精力的に可能な限り現地に出向き、調査を実施することができた。その意味では、予定よりも進行した側面があった。単独の調査であり、視察、インタビュー、自由記述式簡易アンケート調査を計画しての質的研究であるが、言語の問題も大きい中で、現地での多くの研究協力者の御協力の御蔭で得られた貴重な調査結果であるといえる。 また、海外での研究発表の機会が得られたことで、マレーシアでの施設訪問、インタビューは、当日になっての不都合が生じ実現しなかったものの、東南アジアの国の文化理解としての活動ができた側面があった。また、韓国では、研究発表時の機会に、かなり精力的に現地調査に回ることができるなどの成果につながった。 さらに、国内におけるEPAによる外国人介護福祉士へのインタビュー調査の機会も早期に確保でき、実施したことで、今後の国内調査方針への再考にも寄与すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、今年度の2年間での現地調査結果について、分析を加え考察するためにも、文献・資料による研究にさらに注力していきたい。アジア3カ国では、介護人材養成に関する先行研究としては、社会福祉制度・政策と問題点、介護人材の流動など一定の傾向が見て取れる。 その国の歴史・文化をふまえた生活上の思想や様式などをとらまえるには、そのこと自体がかなり大きな概念であることや、方法的にも容易なことではない。言語の問題も大きく、アジア諸国の現地資料自体が不整備である側面や日本語による資料は限られている現状がある。今年度も、キーワードをもとに、多領域、多分野の先行研究からの資料収集を試みているが、その点をさらに継続し、アジアにおける各国の介護事情に関する知見を深めたい。 介護福祉の思想と人間科学のあり方の観点から、介護福祉労働の特性をさらに把握し、介護人材育成にいかに体現されているのか、されることが目指されているのかなどを思い描きながらも、一つのキーワードに「異文化ケア」の担い手としての介護人材養成教育内容などに関する情報収集も進める。 今年度は、研究発表の場として、日本福祉のまちづくり学会や福祉文化学会など、昨年度のアジア学術会議の国際カンファレンスでの研究発表のように、他領域ともいえる研究者や技術者、現場実践者、当事者の集う場での発表に注力していきたい。そして、執筆本としての刊行にむけた取り組みに、さらに具体的に着手していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接的研究費の立て替え分の払い戻し額には満たない残額なため
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次年度使用額の使用計画 |
直接的研究費に加算して使用
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