本研究の目的は、EPAによる介護人材送り出し国であるフィリピン、ベトナム、そして日本との関係性の深い韓国について、各国の介護の実情を把握することであった。福祉施設や事業所、在宅等において現地調査を複数回実施した。その結果をもとに各国の介護事情の一端を把握し、学会発表や論文投稿、授業・市民講座等で、社会発信を行ってきた。 フィリピンのケアギバー資格は国内外の公私的サービス提供者という位置付けにより、援助対象を高齢者、障害のある人、子どもに設定し、異文化理解等を含む養成教育カリキュラムが組まれていた。介護人材調査では、各国とも複数の研修を受講し、他資格を有する人材の存在が把握された。また日常的な介護場面での対象者の尊厳保持や自立支援、生活支援上の工夫等の視点も確認した。フィリピンでは、コミュニティケアとして位置付けられたナーシングホームの実情、地域活動、OJT等の調査を実施した。デイケアセンター(保育所)、児童養護施設等での調査や、ベトナムの混合型施設の調査を通じて、子どもケアに対する介護人材の就労機会に関しても考察を行った。 本年度は、私的な在宅サービスの実情把握として、ホームヘルプサービスを担うケアギバーに対して聞き取りを行った。求人方法や雇い主面談の際に病院・施設での実務経験が影響する。3人でのシフトが組まれ24時間介護を担っていた。医療的ケアは看護師と同様にケアギバーも実施しており、ナーシングホームでも同様の実態があることから、両資格者が同額給与の場合があった。 EPAで日本の資格取得後フィリピンに帰国し就労した介護人材に関しても、実情の一端を把握し、”頭脳流出から頭脳循環”の観点から考察した。またベトナムの調査結果をもとに、水質汚染や医療サービスにアクセスできない等の貧困状態に関して、プライマリ・ヘルス・ケアの視座から再検討をした。
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