本研究は、日本のの高齢者ケアの経験をエビデンスに基づき発信することを目指して、サービス利用者の状態を集積したデータベースの構築を試みるものである。1年次の25年度は、多様な方式が乱立する中で、クラウド方式による共通のデータベースを構築するための課題を整理した。 2年次の26年度は、実際に協力事業者から得られたアセスメントデータを用いて、個人を単位とするデータベースを作成した。その結果2325人に対して、累計4363件分のアセスメントデータが取得された。ただし、これらの取得データの中には、欠損の多いデータや評価対象とするアセスメント時期にばらつきが多く、質の評価として利用できるデータは限定される事も明らかとなった。また、データの取得にはITCを活用したダウンロードシステムを活用したが、その承認手順などについての課題も明らかとなり、より安全で効率的な方法の検討を行った。 最終年度の27年度は、継続的に取得したアセスメントデータが利用者2774人、累計4954件に達した。これらのうち、介護事業者の質の評価(Quality Indicator)の算出に利用できたのは、居宅事業所では11事業所659人、施設では5カ所417名にとどまった。質の評価に活用可能なデータ数が限定された理由は、利用者の改善または悪化を評価するため2回(時点)以上の連続したアセスメントデータが必要なこと、当該事業所の全体の質を把握するため利用者の大半が網羅されていることが条件となっていることによる。また、重症の利用者が多い事業所では死亡により2回のアセスメントが出来ないケースもあるが、評価対象から欠落してしまうというアウトカム評価の問題点も明らかとなった。最後に、より安定した質の評価に必要な大規模データベースの構築には、異なるソフトベンダーから効率的にアセスメント情報を取得するための「情報連携基盤」の整備が不可欠であり、その方策の検討が課題として残された。
|