研究課題/領域番号 |
25511007
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
野口 祐子 京都府立大学, 文学部, 教授 (80128769)
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研究分担者 |
佐々木 昇二 京都府立大学, 文学部, 教授 (30135496)
長谷川 雅世 高知大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (30423867)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 明治時代の京都 / イギリス人旅行者 / 京都イメージ / 旅行記 / 近代化 / 古都化 / 文化財観 / 宗教観 |
研究実績の概要 |
平成26年度は引き続き、明治時代の京都を訪れたイギリス人の旅行記や雑誌記事、スケッチ・写真等の図像、演劇観について分析することにより、彼らが形成した京都観と、その形成に影響を与えた諸要素を分析した。26年度は研究代表者の野口がイギリスで資料を収集し、25年度に研究分担者の長谷川が収集した資料に加え、それらの分析も行った。 その成果として、(1)「明治時代の英語ガイドブックにおける京都へのまなざし--「文化財」という観点」(『京都府立大学学術報告・人文』第66号、2014年12月)、(2)「明治時代の京都でのイギリス人旅行者の神社仏閣めぐり--イギリス人の旅行記に描かれた京都の特別な寺々」(『高知大学教育学部研究報告』第75号、2015年3月)、(3)「明治時代のイギリス人旅行者たちが描いた「昔ながらの日本」と「神社仏閣の都市」としての京都--敬虔なキリスト教徒の目に映った「宗教都市」京都の姿」(『コルヌコピア』第25号、京都府立大学英文学会、2015年3月)を発表した。 (1)は、イギリスで出版されたマレーの日本ガイドブックとイギリス人旅行者の京都訪問記における名所観を分析した上で、二条城と平等院を例に、古色を帯びた建築への否定的な評価がかなり見られることを指摘し、それが日本で「文化財」という概念がまだ育っていなかった時代におけるイギリス人の文化財観の投影である可能性を論じた。(2)はイギリス人旅行者が特に関心を示した神社仏閣を抽出し、その理由を彼らの宗教観から明らかにしている。(3)はイギリス人旅行者が抱いた宗教都市京都への相矛盾する都市観を分析した。 年度末の公開研究会では、イギリスから持ち帰った資料も利用して、イギリス人旅行者による宇治の景観の捉え方について発表した。27年度には資料のより詳しい分析に取りかかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、予定通り資料の収集と分析を引き続き行い、研究代表者の野口がイギリスにおいて19世紀末から20世紀初期の旅行記・ガイドブック・ヴィジュアル資料等を収集した。その成果として、研究目的に記したテーマのうち「1 京都の伝統文化と近代化へのまなざし」「2 京都の景観へのまなざし」「4 京都の美意識へのまなざし」について、論文3本と公開研究会において研究成果を発表した。平成27年度は「3 京都の産業へのまなざし」に関して、明治時代の工芸品制作へのイギリス人のまなざしをテーマとするシンポジウムを予定している。また26年度も資料調査を行った「5 京都の演劇へのまなざし」についても調査結果をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は引き続き研究代表者と分担者が資料の収集と分析に努める。代表者の野口が9月に行うロンドンでの調査で、旅行記・ヴィジュアル資料の他、主要輸出産業であった京都の工芸品についても調査し、27年度後半には、明治時代の工芸品制作へのイギリス人のまなざしをテーマとするシンポジウムを京都で開催する予定である。年度末には3年間の研究成果を冊子体の報告書にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度はロンドンでの資料の収集において、有料のコピー機やスキャニング機器を用いる予定をしていたが、小型カメラが使用できたため、紙媒体・デジタル資料の収集のための支出が予定より少なかった。また年度末に開いた公開研究会では、準備・交流会等への支出がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、外部講師も招いて、研究成果を一般参加者へも広く公開するシンポジウムを予定している。またシンポジウムの内容を成果報告書に掲載したい。そのため、次年度使用額は講師招聘と講演内容のテープ起こし、成果報告書の作成にかかる費用に用いたい。
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