本研究の目的は、米国における日本の竹文化の受容と展開を日米文化交流史的に考察することである。平成27年度は、竹製品や竹工芸の渡米経緯と、竹の栽培や植栽に関する日本との関係について、ひきつづき製作者や栽培家等に対して広く実態調査を行い、また歴史資料や行政資料等の収集を行った。 まず、竹材・竹製品の欧米輸出の振興と展開という枠組みにおいて、竹材・竹製品の明治期以降の商業的な米国移出の歴史と日米文化交流の関係を考察して発表し、輸出工芸品や輸出製品の日本的な魅力等についての調査と考察を続けた。 そして、現在では、デンバー美術館にその多くが収蔵されているアメリカのラッツ一家が蒐集した膨大な竹工芸コレクションの形成について、日米交流を背景とした「竹」の発見とアメリカ展開といった、竹製品・竹工芸とともにあった家族の歩みを、異文化の導入や旅の文化の観点から考察した。 続いて、植物としての竹の米国への移入とその栽培展開については、アメリカ南部・東南部や西海岸の竹の栽培地において、農場や試験場での栽培の経緯や実態から、考察を行った。アメリカでは、日本の竹の導入以後、日本とは異なる気候条件下での生育実験が行われ、日本由来の竹林が、百年を経てもなお歴史的な竹林とされて保全管理され、あるいは現代のアメリカの愛好家によって再発見されている事例の史的背景や現代の動向等を把握した。 本年度は、当初に計画していた竹製品、竹工芸、竹栽培の各視点の実態を明らかにし、竹文化を通した日米交流について多面的な理解へとつなげることができた。
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