研究課題/領域番号 |
25511016
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
加藤 晴明 中京大学, 現代社会学部, 教授 (10177462)
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研究分担者 |
久万田 晋 沖縄県立芸術大学, 付置研究所, 教授 (30215024)
寺岡 伸悟 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (90261239)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域メディア / 地域文化 / 文化変容 / 地域アイデンティティ / 奄美 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
研究実施計画にもとづき以下の調査打合せと現地調査を実施した。 〈研究活動のスケジュール〉研究打合せ①:加藤(研究代表者)・寺岡(研究分担者):6月26日(奄美)、3月2日(奈良女子大学)/研究打合せ②:久万田(研究分担者):8月1日(中京大学)/現地調査:5月8日~12日(加藤:奄美大島)/現地調査:6月26日~30日(加藤・寺岡:奄美大島)/現地調査:8月13日~21日(加藤・寺岡:徳之島・鹿児島市)/現地調査:12月17日~21日(加藤:奄美大島)/現地調査:3月10日~19日(加藤・寺岡:奄美大島) 〈研究活動の内容〉研究打合せでは、それぞれの専門の立場から、奄美のうた文化の現状と情報の交換、そして、最終報告に向けての構想の検討・執筆内容の検討を繰り返した。最終報告は、『奄美の地域メディアとうた文化』(仮)として上程を予定し執筆が進んでいる。現地調査では、徳之島2回の予定を、徳之島の調査が夏に進んだことと、奄美大島での調査でやり残したことが多いことから奄美大島で3回実施した。奄美民謡大賞大会や奄美紅白歌合戦、さらに笠利の朝花節大会など、奄美の代表的な音楽イベントの取材を済ますことができた。 〈研究の成果〉徳之島の調査は、初回であるので、島唄関係者・新民謡関係者・音楽関係者、さらにラジオ関係者・インターネット関係者など、文化とメディアにかかわる全域を調査対象とした。また各歴史・郷土資料館などもまわり、奄美大島とは全く異なる風土・気質・文化への理解を深めた。奄美大島の調査では、各大会での観客の世代や雰囲気の違いを理解することができた。また奄美大島の全公民館講座の一覧表を作成することができた。また各地の代表的な島唄・新民謡講座の講師(教室主宰)の方々の取材をすることで、文化伝承の実態、その担い手(文化媒介者)のライフストーリーやミッションを理解・整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」の達成に関しては、順調に推移していると評価できる。本研究は、実証に基づく(仮)理論構築と、(仮)理論に基づく更なる実証の深化というプロセスに基づいて順調に進んでいる。現在、理論は、「地域メディアの総過程論」、「拡張地域メディア論(文化媒介論)」として仮構築できる段階に達している。 〈地域メディアの総過程論〉は、ある地理敵空間における全メディア事業の配置を網羅して、情報流・人コミュニケーションの相関図を描く試みである。奄美大島に関しては、ほぼ調査を終えており、まとめの執筆に入っている。徳之島は、まだ概要把握段階であり、再度の調査が必要である。沖永良部島・与論島は最終年度である27年度に調査を予定している。 〈拡張地域メディア論〉も、実証にもとづく検証が進んでいる。新聞・テレビ・ラジオといった業種ではなく、文化を媒介する事業(者)を地域メディアとして捉える理論的視野により、民俗文化や大衆文化のメディア的展開(文化の伝承と創生=文化変容)を理解できるようになってきている。同時に、その文化変容のプロセスなかで、共同体機制(集落準拠)と都市的文化との相克が、島唄・八月踊・新民謡それぞれで同時に起こっていることも理解することができた。実証調査を踏まえた、〈文化のメディア的展開〉のモデル化、つまり地域文化の伝統の固持とメディア的展開との相克の汎用モデル化が、明示的になりつつある段階に達している。 〈文化媒介者〉の資料整備として、26年度調査で、奄美大島の全公民館講座のなかの「島唄・八月踊・新民謡」講座の一覧表と過去4年間の受講者数表を作成することができた。また龍郷町の公民館講座の過去の講座の推移表も作成することができ、〈文化媒介者〉と〈文化変容〉の実証データの整備などを数量的な裏付け資料の収集も達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進は、以下の3方向で進めることを予定している。 (1)奄美大島に準拠した研究のまとめ:科研以前の研究成果の土台の上に今回の科研の研究成果が重なっており、その約7年間の蓄積(今年で8年目)を、1冊の成果にまとめる予定である。すでに報告書(単著)の章立て構想も出来、執筆も3分の1程度は終わっている。とりわけ、理論部分での整理・執筆はほぼ終了しており、実証的な章との組み合わせることで、より立体的な報告書となる予定である。この段階で、奄美大島への更なる補完調査が必要となることが予想される。とりわけ、島のポピュラー音楽である現在の音楽事業(ライブハウスなど)へのフィールドワークはまだ手つかずで残っている。新民謡以降の、奄美のの音楽文化の担い手を調査する必要がある。また、世代・ジェンダー・階層の視点から、そうしたうた文化の継承と創生にアプローチすることも必要である。 (2)徳之島の文化媒介者一覧の整理:徳之島は奄美大島とは全くことなる文化的土壌をもった島であり、更に丁寧に、島の文化媒介者に取材する必要がある。また、現在ミニFMなどが次々にたち上がってきており、メディア事業の総過程も変容しつつある。その意味で、論考としてまとめるには、再度の取材が必要である。 (3)沖永良部島・与論島の文化媒介者の発掘:徳之島以南のこの2島については、まったくの手つかずで残っている。この2島は、沖縄の文化的影響が強いと言われており、奄美の文化(その継承とメディア的展開)を相対化し、沖縄・奄美につならる「琉球弧」の文化変容とその媒介者を描くという新しい視野与えてくれると予想される。そのために、最終年度に、現地調査を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
①航空運賃が離島の補助金政策などにより以前より安くなり旅費が節約できたこと。②研究分担者の調査日程が予定よりも短かったこと。③科研費用を使わない(自費・自校費などによる)調査も併用したため、科研負担の日程を節約したためである。現地調査全体の日程は、前年度よりも大幅に伸びており、調査自体には支障をきたしていない。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費に使用する。また、資料収集に使用する。今年は沖永良部島での調査を予定しており、沖縄文化との関係を知る上でも、沖縄関係の資料が必要となることが予想される。
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