研究実績の概要 |
平成27年度は海外出版社の論文集2冊に寄稿した。それらは西洋の幻想怪奇文学の日本語翻訳の草分けである平井呈一に関する論文、"Hirai Teiichi, the Japanese Translator of Dracula and Literary Shape-shifter," Multiple Translation Communities in Contemporary Japan, ed. Beverley Curran, Nana Sato-Rossberg, and Kikuko Tanabe, New York: Routledge, 2015, 169-85およびアイルランドの妖精デュラハンが、いかにして日本のライトノベルやアニメで採用されるにいたったかを調査した論文、"An Anime Dullahan: The Irish Death Messenger Adapted in Japanese Popular Culture," The Supernatural Revamped: From Timeworn Legends to Twenty-First-Century Chic, ed. Barbara Brodman and James E. Doan, Madison: Fairleigh Diskinsion UP, 2016, 133-44である。本研究は、西洋由来の想像力がいかにして日本で受容され海外に再発信されてゆくかの過程を扱うものであるので、入口と出口に関する研究成果を同時期に、英語により海外に向けて発信できたことは意義深い。 また、新潟県小千谷を訪問調査した際、戦時に彼の地で教鞭を取った平井の教え子である故佐藤順一氏の元に残された、平井の手による書を偶然発見した。これらの書は平井の文人としての活動を示す証拠であるとともに、後世に残されるべき貴重な文化的資料である。そのうち四点が文化的価値を鑑み、神奈川近代文芸館に収蔵されることとなった。収蔵にあたってご助力をいただいた佐藤久子氏、堀澤祖門氏、紀田順一郎氏、東雅夫氏、立恵子氏に心より感謝申し上げる。
|