前年度の平成27年1、11月にフランスで同時テロが起こり出張を取りやめたため、最終年度にあたる平成27年度は平成28年3月12月より24日までパリに出張し、京都ノートルダム女子大学名誉教授の野田四郎氏に通訳とコーディネーターを依頼し、パリのホロコースト記念館国際関係担当局長のブルーノ・ボワイエ氏、フランス被追放ユダヤ人子息子女協会会長のセルジュ・クラルスフェルト氏、ユダヤ芸術歴史博物館館長のポール・サルモナ氏、国立移民史博物館研究課長のマリアンヌ・アマール氏、オルレアンのヴェル・ディヴ子供博物館会長のエレーヌ・ムシャール・ザイ氏、館長のナタリー・グルノン氏と面談し、貴重な情報を入手したことは大きな成果であった。この研究については、ルーヴル美術館とケ・ブランリー美術館から開始したが、今回の面談により、2003年に本格化した国立移民史博物館設立構想もシラクを中心に計画されていたことが明らかとなった。また、ユダヤ芸術歴史博物館に関しても、シラクが首相時代からジャック・ラング文化相とともに、設立に向けて積極的に支援を行っていたことが明らかとなった。そして、2005年のホロコースト記念館開館に向けて中心的な役割を果たしたセルジュ・クラルスフェルト氏には、来年度出版予定の訳書『ジャック・シラクの演説・メッセージ』集の序文執筆を承諾していただいた。同氏は、シラクが1995年の演説のなかで、第二次世界大戦中、ヴィシー政権がフランスのユダヤ人の強制移送に積極的な役割を果たした事実を、大統領として初めて認めたことを高く評価していた。さらに、大統領退任後もシラクが2011年1月、ヴェル・ディヴ子供博物館開館式に、ホロコースト記念財団理事長を務めたシモーヌ・ヴェイユ氏と出席した事実を確認した。以上の調査からシラクが常に歴史に向きあい、これらの博物館設立構想も記憶の活動の一環と捉えることができる。
|