本研究は、外部サービスの提供に過度に依存した在宅福祉、高齢者の集中居住によるサービス供給の効率性を追求するサービス付高齢者向け賃貸住宅(サ高住)供給のいずれでもない第3の居住支援モデルとして、フランス、オランダでみられる社会住宅制度を活用した高齢者居住支援の仕組みに着目し、その実態と課題を探ることを目指すものである。研究期間中に得られた主な知見は以下の4点にまとめられる。 1)フランス、オランダはともに日本より公助による支援が厚く、福祉サービスが豊富である。ただし、近年ではその抑制をはかる制度改正が進んでおり、そのなかで、住宅の役割が一層強調されるようになっている。2)フランスでは大規模社会住宅団地を再編し、居住階層や住宅テニュア、建物用途の混合を進めようとしている。そうしたなかで、社会住宅供給組織が若者や若年子育て家族層と高齢者世帯の共住を企図した共同住宅の供給など、新たな居住モデルを提起している。3)オランダでは住宅とケアの連携に取り組む社会住宅供給組織が多数存在し、ケアサービス拠点を擁する要介護高齢者向け住宅の供給が進められている。社会住宅として供給される住宅はなお高い質水準を維持しているものの、他方で、公助によるサービスへの依存を抑制し、家族や地域を巻き込むインフォーマル支援が強調されており、加齢による心身状況の変化に柔軟に対応できる共同住宅の開発や居住地整備が目指されている。4)日本の公共賃貸住宅部門は両国に比べてそのシェアが小さく、さらなる要支援高齢者の受け皿として期待できない状況にある。一方、政策誘導されてきたサ高住の供給や居住支援協議会を巻き込む民間住宅活用にも課題がある。高齢化がすすむ分譲マンションで試みられている管理制度を活用した見守り活動などが注目される。今後、それらの互助型居住モデルとしての可能性を検討したい。
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