本研究は、地方自治体の行政区域を対象とした住宅・宅地関連施策の影響評価への適用を意図した、街区(概ね1ヘクタール規模)単位の長期的な土地利用変化のシミュレーションモデル開発の基礎となる知見の獲得を目的としている。具体的な研究課題を、(1)既成市街地内での土地利用の高度化過程の個々の住宅画地単位のシミュレーションモデルの構築、(2)都市全域での長期的な市街化過程の街区単位のシミュレーションモデルの構築、(3)作成したシミュレーションモデルを適用した、住宅・宅地関連施策が土地利用・人口動態等に及ぼす影響の分析、として研究を進めた。 課題(1)については、東京都内の典型的な住宅地域を事例地区として、1950年代から2010年代にわたる、住宅用地の画地単位の分割・用途変更の実証的解析を行い、大都市内の住宅地区における画地単位での長期的な土地利用動態と、さらに居住人口動態の機構を表現する微視的モデルを構築した。 課題(2)については、国内の県庁所在都市の一部(前橋、岐阜、水戸、福井、富山、金沢、福島、宮城、山形、盛岡、秋田、長野、鳥取)を対象として、セル・オートマトンの概念を基礎とした、街区(約100メートル四方)単位の非都市的土地利用から都市的土地利用(宅地)への長期的な変化過程のモデルを、「国土数値情報」所載の統計資料、都市計画図、都市計画関連資料を利用した実証分析結果を基礎に構築した。 課題(3)については、画地単位での長期的な土地利用動態と、さらに居住人口動態の機構を表現する微視的モデルを適用して、住宅敷地の最小規模の相違が、地域の長期的な人口年齢構成に及ぼす影響等のシミュレーション分析を行い、さらに、街区単位の非都市的土地利用から都市的土地利用(宅地)への長期的な変化過程のモデルを適用して、市街化区域の規模が都市域のコンパクト化へ及ぼす影響等の分析を行った。
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