本研究の特徴は、都市空間に変化をもたらすような属性が、土地利用の変化や地域住民の移動にどのような影響を与えているのかを空間的に把握することであった。昨年度の研究成果では、交通インフラに焦点を当て、高速道路の時系列データを用いた分析を行った。 その際の分析手法としては、Difference in Differencesの手法を用いて行い、高速道路のインターチェンジ新設の影響を、土地の価格にみた。 今年度は、交通インフラに限らず、さまざまな都市に関するデータについての変化をみるために、総務省統計局が管理している、「統計でみる都道府県・市区町村のすがた(社会・人口統計体系)以下SSDS」を用いた。市町村の基本的な諸データが時系列的にどのような変化をしているのかを、このデータを時系列的に分析することでみることが可能となる。本データには、人口・世帯、自然環境、経済基盤、行政基盤、教育、労働、居住、健康・医療、福祉・社会保障など国民生活全般の実態を示すデータが、毎年収集、整備されている。 今回SSDSから抽出したデータは、住居・土地利用関係では、空き家数、一戸建て住宅数、昭和55年以前(S26-55)に建築された住宅数、一住宅当たりの延べ面積、都市公園面積/総世帯数などのデータである。人口関係では、人口集中地区人口、人口集中地区面積、転入者数、 転出者数である。さらに経済基盤としては、第1次産業従業者数、第2次産業従業者数、第3次産業従業者数などのデータを整備し、その時系列的な変化を確認した。 また、今年度は関連研究として、活断層帯への近接性の情報が、人々の移動にどのような影響を与えているのかの研究についての共同研究の論文を、ジャーナルへ投稿した。
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