研究課題
タンパク質構造の解析手法の1つに,質量分析法とHD交換法を組み合せる手法がある。また、タンパク質が形成する空洞を網羅的に解析する方法として,パーシステントホモロジー群がある。パーシステントホモロジー群は,平成23年に,濃野・平岡らが提唱した解析手法であり,タンパク質内の原子を0単体とし,それらを各ファンデルワールス半径からなる球で近似した3次元対象のnerveをとったものから,ファンデルワールス半径などを実数倍することで,トポロジカル・キャビティ(T-キャビティ)がホモロジー群として生成・消滅する。半径関数0.8付近のピークは小さな空洞を,半径関数1.5付近のピークは大きな空洞(ロバスト空洞)を表している。本研究では,様々な種類のタンパク質にHD交換実験を行うことで,各タンパク質のHD交換速度を算出し,それらの結果とパーシステントホモロジーの相関から,タンパク質の空洞がHD交換に及ぼす影響を考察した。タンパク質のHD交換速度とタンパク質を構成する疎水性アミノ酸の数に相関があることがわかった。また,HD交換速度とパーシステントホモロジーとの相関から,タンパク質の疎水性度と空洞の数,大きさもHD交換速度を決めることが明らかとなった。このことから,従来のHD交換実験において,HD交換速度はタンパク質の持つ水素結合で決定されていたが,タンパク質内部の疎水性アミノ酸がもたらす空洞に重水が入る速度がタンパク質のHD交換速度を決めている要因の1つであることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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