研究課題/領域番号 |
25513006
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
川上 隆雄 横浜市立大学, その他の研究科, 客員准教授 (40366117)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | プロテオーム / リン酸化 / 分析科学 |
研究概要 |
蛋白質の翻訳後修飾に関する定量的かつ包括的な知見は、細胞の制御機構を正確に理解する上で必須の情報である。本研究では、リン酸化シグナル伝達系の高精度定量法を開発する。本年度は、窒素ガス引き込み法により、計測に用いる質量分析システムの検出安定化および高感度化を図った。 エレクトロスプレーイオン源を微流速の液体クロマトグラフに接続した場合、溶出期間にわたってイオン化ペプチドの高感度検出を維持することが重要である。大気由来のバックグランドノイズをおさえるため、代わりに純窒素ガスを供給した。イオン源に供給する窒素ガスの量を質量分析計への引き込みと同調させることは困難なので、送気系の途中に余剰の窒素ガスを系外に逃がすための工夫を施した。この結果、バックグランドノイズを5分の1以下に抑えることができた。しかしながら、イオン化ペプチドの検出強度もノイズの低減に応じて低下することがわかった。そこで、代替の手段として大気の引き込み口に活性炭フィルターを取り付けた。この方法でもノイズ低減の効果が見られた。フィルター取り付けの仕様を用いて、6種類のウシ由来タンパク質から調製した標準ペプチド混合物を測定に供したところ、タンデム質量分析の出力データ量が2倍程度まで増加した。 今後は、イオン源の周囲にさらに工夫を施し、安定的かつ高感度の測定系を構築する。また、実試料の測定によってもその効果を確かめる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れていると自己評価した。本年度は質素ガス引き込み法で高いシグナル/ノイズ比を達成することを目指したが、イオン検出の強度の低下とともに検出の再現性も十分ではなかった。質量分析計の引き込み口付近に窒素ガスの気流が残っている可能性がある。代替として用いた活性炭フィルターがノイズ低減に効果のあることが分かったので、次年度は両方法について再検討をおこなう予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度で不十分だったシグナルノイズ比の向上を引き続き課題に挙げる。気流が発生しないように窒素ガスの供給量の最適化を図る。また、大気清浄フィルターについては、5種類以上の素材をシグナルノイズ比の面で比較する。 定量計測の対象となる合成ペプチドを設計する。すなわち、MAPキナーゼカスケードと受容体チロシンキナーゼを中心に、定量対象のリン酸化部位を選定する。今回は合計10種類程度のリン酸化部位を選定し、各リン酸化部位を含むアミノ酸配列情報から非リン酸化型の合成ペプチドを設計する。ペプチドの両末端はトリプシンで生じると想定し、安定同位体原子13CをC末端ArgあるいはLys残基の側鎖に導入する。LC-MS/MSに供して得られた合成ペプチドのMS/MSデータを12Cに換算し、ペプチドあたり3組のSRM測定変数を設定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究実施の結果、30万円弱を次年度に繰り越すことにした。次に挙げた事由の総和として次年度使用額が生じた。1.計測技術の最適化のために使用する大気清浄フィルターを無償で取得することができた。2.購入消耗品の員数が少なかった。これは、質量分析システムの運用における消耗品の交換の頻度が予想よりも低かったためである。 上記の繰越額は、次年度の合成ペプチドの購入に充てる。1種類10万円として、計3種類。より多数のペプチドを定量計測に用いることができる。
|